城乃山 茸士

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ああ、これは夢なんだ。
そう気づいてしまったら急にいろいろなことがどうでも良くなった。悩んだことも、頑張ったことも、苦しんだことも。起きてしまえば何のことはない、いやな夢だった、というありきたりな言葉と共に処理されてしまうのだろう。この男に苦しめられてきたことも、今私が抱いている感情も。

ならば、夢が醒める前にこれだけは済ませておかなければ。

私は手の中の包丁を、その存在を確かめるようにぎゅっと握り締めた。

3/20/2023, 2:20:15 PM