青いハイヒールで夜を彷徨うの
大きな道全体を見渡しながら真ん中を歩く
寂しい女の浅はかな見栄。
1週間前切ったあの男
泥沼を排気ガスと油汚れで煮込んだようなクズで
あいつの吸ってたタバコが今も鼻に残ってる
私も気づけば一緒になって吸っていて
今ではもう中毒だ。クソッタレ。
禁煙だ禁煙、そうでもしないと
あの日々の煙にずっと汚染されていくだけ。
それなのにいつまで経ってもやめられない。
またいつか。もういいか。
どうしようか。まあいっか。
あいつから教わったのは、私は自分の居場所を他人に押し付ける青い顔したブスだったこと。
大きな道の真ん中を青いハイヒールで歩く
朝日に背を向けて紫煙をふかしてどこまでも
風に吹かれて聞こえた音は
あなたの声みたいで
涼し気で
熱くなった頭を一気に冷やすような
可愛げのあって
どこか裏のある音
透き通った風鈴の音が
暗くて湿ったくて息苦しい空間を
一気に軽くしたんだ
ありがとう感謝してるよ
もう聞けないけれど
僕はずっと縋って助かっているよ
過去に囚われる事は悪くないね
悪いことじゃないよね
悪いことじゃない
最近は何をするにも嫌になる
朝、布団からでるのも嫌
靴を履くのも嫌
駅の改札をくぐるのも嫌
指示に従う事も
頭を下げることも
自分の間違えを認めるのも
何もかもが嫌
満たしたいのは自分の欲求
叶えたいのは幸せな夢
見失ったのは自分を取り持つ希望だった
願い事とか特にない
毎日普通の世の中に合わせていれば
害もなく変化なく平和に終わっていく
今の時代に必要なのは
神や奇跡なんかに願うのではなく
廃れた現実を見て受け止める事である
だから夕飯の準備なんておいといて
僕に少し硬いその太腿を貸しておくれ
受け止めるという事は
諦めるという事だと僕は認識している
そうすると空の解像度が
少し上がるように思えるから。
歳をとって大切を背負った僕は
ほんの少し世界を受け止めたのかも知れない
カーテンが隠したのは眩しいほどの太陽
少し曇った青空
家の前を歩く他人の視線
スカートが隠したのはあの子の綺麗な脚
思い出せない顔
僕という他人が送る視線
カーテンから香る冷めた春の匂い
スカートというか、君から香る
冷めきった桜の匂い
遠くて近い既視感
長くて速い時の流れ
リセットされないあの記憶
見つけたのは変わらない僕でした。