通りすがりの字書き

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4/5/2024, 9:15:54 AM

あー。何を見ても同じに見える。
高額商品をたくさん並べられると、何が何だかわからない。
とても綺麗な女性が商品をアレコレ勧めてくる。
だが、私にはつまらない時間でしかない。

「うーん。じゃあ、それでいいわ」
私の隣にいた男性が、こちらをジロリと睨んだあと、大きなため息を吐いてから物申す。
「もっと真剣に選ぶ気はないのか?」
「正直、何見てもよくわからない」
「婚約指輪だぞ?」


お題『それでいい』

4/3/2024, 1:45:08 PM

どれだけ遠くに逃げても、また見つかる。
この場所も2年で見つかった。
その前は1年。数ヶ月で見つかったこともある。
私の隠れ方が悪いのだろうか?
いや、探す方が優秀なのか?

私は犯罪を犯したわけではない。ただ、愛する人から逃げたかっただけ。逃げなくてはならなくなっただけ。

婚約者が現れたから、邪魔者は何もかも捨てて逃げただけなのに、なぜ探すの?

一つだけ願えるのなら、私に隠れなくて良い場所を与えて。

まだ、この世界にいたいから。

3/28/2024, 2:23:12 PM

私は、行きつけのバーの扉を開けたまま固まった。
しまった、来る日を間違えた。
見つかる前に退散すべきなのに、驚きで足が動かない。 

「早く座れ、扉が開いていると寒いじゃないか」

カウンターに座ったまま、こちらも確認せずに命令してくる。後頭部にも目があるんだろうか。

扉を閉めて、いつもの席ではなく、男から離れた席に座る。なけなしの抵抗だ。

カウンター担当のバーテンダーがオーダーをとりにきたので、キープしていたウイスキーのロックを頼む。

感じたくない視線を体全身で察知する。恐る恐る右に視線を動かすと、会いたくなかった男と目があった。
恐怖を感じさせる笑顔で見つめられたら、いつもの席に移動せざるを得なくなった。

座る前に、男に伝えなくてはならないことがあった。

「ごめんなさい」

男は不敵に笑うと、グラスを傾けた。

「別に怒っちゃいない。ただなぁ、次も理性が保つとは限らないよ」


私は、今日は一杯飲んだら帰ろう。と心に決めた。