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6/11/2025, 12:10:50 PM

雨音に包まれて


ざーざーとふり荒ぶ雨音がつれてくる風が窓をガタガタと叩く。線状降水帯が列島に長いリボンを作る今しばらくはじめッとした湿気が晴れることは無さそうだ。

ここ数日はずっと雨の匂いがする。

サウナとも違う、お風呂の湿気とも違う、肌にまとわり付くようなじわっとするベタつく湿気の匂いが梅雨の到来を示す。

カエルが喜び、紫陽花が花開き、色とりどりの傘の花が咲き乱れる。

子供達のびちゃびちゃと水たまりを跳ねる長靴の楽しげな音を聴きながら雨に濡れてじっとりと張り付いた雨合羽をブンブンと振って雨粒を払った。

空にはどんよりとした空。

夏は近そうでまだ遠い。
長靴の雨水を拭きながら、まだ濡れないように少し早めのサンダルをしまった。

6/11/2025, 8:48:40 AM

美しい

紅葉を模したかのような小さなてのひらをめいっぱい天に掲げて貴方は何を掴もうとしてるのだろう。

少し何かぶつかって仕舞えば壊れてしまいそうな、ガラス細工より繊細で綺麗な瞳がキラキラと光り輝いてみえる。

映り込んだ私の顔が貴方にどんなふうに見えるのか。

人差し指を目の前にかざせば小さな手が力を込めて握り返した。弱々しくさえ映る細くて小さな指に思わぬ力で握り込まれて温かな体温に命を感じた。

貴方を彩る世界が美しいものだけであればいいのに。

そう心から祈る私は、醜いものを知りすぎた。
美しいものが何かすらもうわからないまま、
ただただ、目の前で笑う美しい命の幸福を願う。