Kiss
始まりのKissはいつも相手からで、それでいいと思ってた。
でも二人で楽しく飲んで解散する時、思わず体が動いてしまった。
「じゃ、またね」
改札を通ろうとするあなたのそばに寄ってつま先立って、くちびるに少し触れる。
目を見開いたあなたの顔が可愛くて。
ねえ私、あなたのことがとっても好きみたい。
#165
1000年先も
古く奈良から平安時代に精魂込めて造られた仏像や寺院で運良く残ったものは、1000年を超えて今も私たちの目を楽しませてくれる。
対象的だと思うのは伊勢神宮だ。
伊勢神宮は式年遷宮といって20年毎に新しく建て替えている。大量の良質な木材などを使用するため莫大な費用が必要になり、これを知った時はもったいない、まだまだ使えるはずなのに、と思ってしまった。
でもこの方法は、人が建立技術を受け継ぐためには理に適っているそうだ。
駆け出しの二十歳の時に、働き盛りの四十歳の仕事を見て、四十歳で六十代の総棟梁の采配を覚えておく。そうやって経験を重ねて、技術を1000年以上も伝えてきた。そしてこれから1000年先も伝えていく。
素晴らしいものを後の世に残したいと願うのは皆同じだろうが、その心を造り上げたものに託すのか、後に続く人に託すのか。
そのやり方は色々あるのだと考えさせられる。
#164
ブランコ
子どもの時以来だ。
公園のブランコに恐る恐る座ってみる。
並んで漕ぐ娘に合わせて漕ぎ出せば、
風が髪を靡かせる。
楽しくなって、大きく足を振って勢いをつけて、
空に向かって高く、もっと高く。
何十年かぶりに乗ったブランコに、
時が巻き戻されていくみたい。
見上げれば空に吸い込まれそうな気がした。
#163
旅路の果てに
今まで私が経験した旅は、
行くところも帰るところも決まっていて、
待ってくれている人が必ずいた。
行き先もその果ても知らずに、
私が最も深く体験できる旅があるなら、
それはこの人生より他には無いと思う。
旅路の果てに何を感じるのかは、
よくわからない。
ただ今までその旅路に暗く苦しい時があっても、
本当に一人ぼっちだった時はなくて、
善意や小さな思いやりを集めて灯火にして、
暗い行き先を照らして、
歩いていたんだと思う。
#162
あなたに届けたい
雪が降っても、
桜が咲き始めても、
虹を見ても、
美味しいお菓子を食べた時も、
かっこいい音楽を聴いた時だって、
いつだってあなたに届けたいと思う。
どんな時も。
#161