優しさ
あなたが優しい人だと知っていた。
人の気持ちに敏感で、困っている人には自然に手を差し伸べる。
だけどあなたが、自分の優しさを自覚した時、
その優しさからは、
少しだけプラスチックの匂いがするようになった。
どうか気づかないで。
もし気づいたなら、あなたは、
とても傷ついてしまうと思うから。
#158
安心と不安
あなたに会って、安心とは何かを知った。
あなたの前では、私の心と体は伸び伸びとして、
繕う必要がなかったから。
それまでの私は、本当の意味で安心していなかったのだ。
だからきっと、
あなたを失いそうになる時、
私は本当の不安を知ることになってしまうだろう。
#157
逆光
光あふれる美しい景色と一緒に、
あなたを撮りたい。
あなたは日射しがよく似合うから。
でも私が光に惹かれて、
近づこうとすればするほど、
あなたは逆光で暗くなり写らなくなってしまう。
私が光に背を向けた時、
初めてあなたがはっきり写るなんて、
なんだか皮肉ね。
#156
こんな夢を見た
昔、職場の先輩だった女性に、
「〇〇ちゃんの結婚式の夢を見たよ」と言われたことがある。
ぎょっとした。
「ど、どういう夢だったんですか!?」
彼女と私は特に親しかったわけでもない。その時の私にそんな相手も予定もない。なのになぜ?
私が驚いて尋ねても、彼女は笑うだけで相手も内容も教えてくれなかった。何かの予知夢の類じゃないだろうなと、しばらくは気味が悪かった。
一体どんな夢を見たんだろう。彼女は私のことをどう思っていたんだろう。かなりインパクトのある言葉だった。あれから随分経つけれど、今でも時折思い出す。
#155
タイムマシーン
「タイムマシーンがあったらどうする?」
子供みたいにあなたは笑う。
「そうだね、やっぱり未来が見たいかな」
地球はまだ青いかとか、
誰でも月旅行ができるかとか、
太陽系の外に出られるかとか、
光の速さを超えて時を飛ぶ、まだ見ぬ未来を二人で想像した。
でもね、
もし目の前に真新しいタイムマシーンが現れたとしても、あなたを置いて乗ったりしないよ。
どんな素敵な未来でも、
あなたがいないとつまらない。
グラスのスパークリングワインの泡が光を弾く。
こんなひとときには敵わないもの。
#154