君が起きるまで、何度でも君の名前を呼ぶよ。
何度でも、何度でも、声が枯れるまで。
だからさ、早く目を覚ましてよ。
今度は僕の名前を呼ぶ君の声が聞きたいな。
お題:声が枯れるまで
恋の始まりはいつも突然だ。
それが年頃の乙女のものなら尚更に。
とある少女は恋をした。
絵画の中の美しい青年に。
いつしか青年は心を持った。
少女も知らない間に。
そして青年は恋をした。
二人は愛し合っていた。
少女は涙した。青年は嘆いた。
二人の恋が結ばれないことに。
青年は思いついた。
二人が永遠に共にいる方法を。
時は流れとある美術館。
そこに飾ってある一つの絵画。
そこに描かれていたのは、青年と少女の姿。
少女のドレスは、まるで血のような紅に染められていた。
お題:恋の始まり
昔々と言うでもないほどそう遠くない昔、とある教会に二人の少女と一人の青年が住んでいました。
ある日突然、少女が一人死んでしまいました。
少女はもう一人の少女が大好きでした。
少女は大好きな子が心配で死にきれず、お化けとなりました。
もう一人の少女は青年に憧れを抱いていました。
いつかはこの教会で、とベールを被ることを夢見ていました。本当は、大好きな親友にも祝ってもらいたかったけど。
青年はお化けとなった少女に恋していました。
その愛情は歪んで元の形が分からないほどでした。
深く深く、愛していました。
お化けに近づくため、彼は自分に向けられた少女の憧れを利用しました。
お化けは少女を弄ぶ青年が許せませんでした。
お化けは自分に向けられた愛を知らないままでした。
青年を許せなくて、親友を守るため、お化けは青年を呪い殺してしまいました。
お化けの愛情もまた、歪んでいました。
青年はお化けとなりました。
お化けは親友を守ろうとしました。
少女は大事な人が皆いなくなってしまいました。
少女はひどく悲しみました。たくさんたくさん泣きました。
お化けは少し罪悪感を覚えました。そして少女をずっとずっと見守ろうとしました。
青年は大変喜びました。
何故かって?
お化けになれたら、愛する人をずっとずっと離さないでいられるからです。
めでたしめでたし。
お題:すれ違い
静かな図書館、ガラス張りの一面から差し込む陽の光。
秋晴れの青い空の下、ふたりは古い本を読む。
昔々の物語、とある人間と鬼の恋のお話。
鬼に恋した人間は、村の掟に従い涙零しながら鬼を斬った。
ふたりは約束した。来世はふたりでずっと一緒にいようと。
かつての世の恋したふたりは、今は揃って人と成り。
二人仲良く文字を眺めてる。
秋晴れの図書館のお話。
お題:秋晴れ
あなたはだあれ、ひらがなが読めないからあなたの名前が分からないの
忘れられないよ あの雨の日、自分の黄色い傘を貸してくれたあなたのこと
あなたはおうちが遠いから、傘がないと濡れちゃうのに
「家が近い」なんて嘘ついて、傘を押し付けて雨の中走ってったあなたにもう一度会いたくて
傘についてた名札に名前が書いていたから、頑張ってひらがなを覚えたのに
名札が雨で滲んで読めなかったの
傘を返しに会いに行っても、あなたはもうあの時のことを忘れちゃってたから
悲しくって、名前も聞きそびれちゃった
あーあ
なまえがあったら、こっちがわにつれてこれたのに
お題:忘れたくても忘れられない