美味しいゴチソウ作ろうか
早くツリーを出さなくちゃ
あったかいおうちにもう帰ろう
いちごのケーキを買ったげる
サンタさんは来るかなあ
プレゼントはなんだろうね
雪が降ったら遊べるね
ぼくとわたしのクリスマスイブ
どうか枕元の靴下は、明日の朝には膨らんでいますように
地元に帰ってくると、ふとこの匂いを思い出す。
たくさん近所からもらって、毎日お風呂に四つ、五つ。
とぷん、といれると瞬く間に広がる良い香り。
都会の一人暮らしでは、滅多に出会えない。
買おうとすると一個が凄く高い。そもそも買う感覚もない、だって貰うものだから。
仕方ないので入浴剤一つ。湯船にとぷん、しゅわー。
「あ」
ふとゆずの香りが広がった。
この世全てに値札を貼ったなら
きっと貴方の値段は紙がいくらあっても足りないわ
そう 美しい 麗しい 綺麗 可愛い
見るもの全てを惑わせて 自分を買わせたくするの
周りの商品なんてお構いなしよ
いつもベストセラーは貴方だけ
私は到底届かないわ
誰かに手にとって貰うことも
貴方を迎え入れることも
全部 全部
叶えさせてくれないのね
ああ なんて
遠いトコロにいるのかしら
もう少しだけ、この崩壊する世界の中で
ふたりだけの時間を頂戴
崩れゆく世界の中でさよならを言う僕は
どうしようもなく苦しくて 助けて欲しくて
終わりたくない 終わらせたくない
終わらせないで
ああ 神様
シェルフから皿を取り出し、彼女はにこりと笑う。
午後三時、いつもの御茶の時間。
ケーキスタンドにお菓子を並べ、いつものように椅子に座る。
長女の席にはダージリンのストレート。
次女の席にはアールグレイのミルク入り。
三女の席にはニルギリのレモン付き。
四女の席にはローズヒップティー。
それぞれ好きなお菓子を目の前の皿に置く。
ショートケーキ、マカロン、フルーツゼリー、スコーン。
広い広い食卓、紅茶の香りが充満する中、私はアッサムをこくりと一口、チョコレートをお供に味わった。
四女は静かにスコーンをジャムと食べ、上品に紅茶を飲んだ。
広い広い食卓、紅茶の香りが充満する中、
私と四女は静かに上の三姉妹の帰りを待っている。
もう三人帰らぬ人となったことを知りながら。