目が会った瞬間、この人だと思った。
優しい眼差し、芯の通った声、鼻筋の通った顔つき。
まさに神の最高傑作。彼以上の生物など存在しない。
彼を見た瞬間、恋情より先に、独占欲が私を支配した。
誰のものでもないのなら、
誰より先に私のモノにしなくちゃ。
たしかに綺麗な声だけど、叫ばれるのは面倒ね。
柔らかい目が取り柄なんだから、睨まないでよ。
傷付かないよう丁寧に、気付かれないように素早く。
大切に、誰にもバレない所に隠すの。
お気に入りだから、誰にも盗られたくない。
純粋で甘ったるいホワイトチョコレート。
嫉妬や独占欲で苦いビターチョコレート。
隠し味には恋に恋する盲目のブランデー。
ビターチョコを多めに入れて、白と黒を混ぜ合わせる。
黒が強いマーブルチョコ、貴方への想いにぴったり。
私は、誰かを愛したことも、
誰かを妬んだこともなかったのに。
貴方に出会ってから変わってしまった。
それなのに、分かってくれないなんて不公平よ。
苦くて苦しくて、それでも少しの甘さに酔わされる。
ああ、本当に貴方にぴったり。
今日だけは、私の愛を味わって。
過去は、霞んでいく。
飛び跳ねてしまうほど嬉しいことがあっても、
死んでしまいたいほど苦しいことがあっても、
いつの日か、鮮明に思い出せなくなる。
青春時代の切ない恋心も、
貴方と出会った時の気持ちも、
その時に得た激しく強い感情は、霞んでしまった。
過去に生じた確執なんて、今の私は覚えてない。
昔愛していた人だって、今更なんとも思わない。
私が表現出来る感情は、全て今の思いだ。
今食べているものがそこまで口に合わないこと。
今聞いている音楽が最近のお気に入り曲なこと。
今、ふと見た貴方の横顔に惚れ直したこと。
私が伝えたいことは、今の気持ち。
今までと同じ思いかはわからない。
これからのことなんてわからない。
それでも私は今、貴方を愛してる。
初めて君を知ったのは、花が咲いている公園だった。
色とりどりの薔薇に囲まれた君は、
どんな花より美しく映った。
正しく一目惚れだ。
それから何度か見かけて、話しかけて、
ピクニックをする仲になった。
君を知る度に好きになっていく。
君との待ち合わせ場所に向かっていたら、
ふと目に留まった花屋。
店先に出ていた真っ白な薔薇を見た時、
笑顔の君が頭に浮かんだ。
花を買うには十分な理由だった。
花束なんて大層なものは、買えなかったけど。
この一輪に想いを込めたから。
「好きです。出会った時からずっと。」
どうか、伝わって欲しい。
最初はわからなかった。
君と目が合った時のこの感情の名前を。
ただ、顔に熱がこもって、胸が暴れ出す。
ろくに口も開けなくなるこの感情を、知らなかった。
君を知っていくうちに、分かってきた自分の想い。
君とずっと話していたい。君の1番になりたい。
だんだんと欲張りになっていく自分が、
ちょっと嫌いになりそうだった。
ようやく知った君への愛は、最初の頃より重たくて。
いっその事君を、どこかに閉じ込めてしまいたい。
恋慕はいずれ、執着に変わっていく。
つい、溢れ出てしまった気持ち。
「私だけを見てよ」
ため息とともに出た言葉は、
君の耳に入るには小さ過ぎて。