走る。走る。走る。走る。
なぜ走る?何に追われている?
私には、何が見えている?
可笑しい。可笑しい。可笑しい。可笑しい。
なぜ可笑しい?何が可笑しい?
本当に、可笑しい?
疲れた。疲れた。疲れた。疲れた。
なぜ疲れた?何に疲れた?
どうして疲れている?
走らなければ。兎に角。
怪しまなければ。全てを。
感じてはいけない。何も。
あれ、私って、何だっケ。
< ク ヒ ッ >
#ただ、必死に走る私。何かから逃げるように。
眉を8の字にして、少し困ったように言うその「ごめんね。」程薄っぺらいものはなかったように思う。
貴方の何度目かの夜遊び。
いや、10回目かな?10回記念じゃん、おめでとう笑
いつもはへらへら謝っていた癖に、その時はそんな顔をして謝るから。
『あぁ、やっと改心したんだ。』
そう思った。
なのに。その日から何をしてもそうやって謝るの。味を占めたのかしら。
他の女に私のナカに入れたものを突っ込んでるって考えただけで吐き気がした。その日から貴方が気持ち悪くなった。
何度目か分からない薄っぺらい「ごめんね。」
いや、確かあの日からだから7回目かな。
「ごめんね。」
あぁ、五月蝿い煩いうるさい。
その後ろの女は誰。どうして裸なの。さっき聞こえた甘い声は何。責め立てたいことは沢山あるけど。
『離婚しましょう。』
出ていこうとした。いや、ここは私のマンションだ。
寝室に押し入る。シーツごと散らばった服を一緒くたにして女に押し付ける。
無駄に胸が大きくてメイクが濃い背の低い女。私と正反対。穢らわしい。
貴方を1度引っぱたいて。指輪を投げ捨てて。
『出ていって。二度と来ないで。あなたの私物は後日あなたの実家に離婚届と共に送るから。』
「ごめんね。」
あぁ、今回はへらへらと謝るのか。
#ごめんね
あなたが好む季節に、あなたが好むその半袖。
その服から伸びる少し逞しい腕が好きだった。
その腕で抱き締めてくれるその時間が好きだった。
あの日少し恥じらいながらはにかんで囁いた愛はもう私のものでは無いのね。
いつまでたっても辞められなかったその煙草。貴方からするニコチンの香りがいつしか愛おしくなってた。
1日かけて馴染んでいく貴方の香水が貴方の匂いになっていくのが好きだった。
こんなに好きにさせたくせに、遊びだったなんて馬鹿みたい。
あの子にはもっと甘い愛を囁いていたの?
こんなになっても好きだなんて、つくづくやになっちゃうや。
あなたが入り浸っていたあのワンルームマンションは今頃誰かのもの。
私がのめり込んでいた貴方も今頃誰かのもの。
#半袖