あの子の目は左右色が違うからってみんな仲間はずれにする。
大人も気味が悪いと言って近寄らない。
でもぼくはあの子の目がすごく好きだ。
左目はぼくたちと同じ色で
右目は真っ白で何ものにも染まらない孤高で澄んだ瞳をしている。
すごく、綺麗だなあ。
#澄んだ瞳
白波のドレスでステップを踏み
暴風が奏でる不協和音
激しいダンスがお好みのようで
#嵐が来ようとも
赤い提灯を揺らす生ぬるい風
少年は下駄を鳴らして人混みを駆ける
揺蕩う金魚
こちらを見つめるお面
ふわふわ甘いわたあめ
何もかもが特別な日
わたしたちの夏はあと何回やってくるだろうか
#お祭り
神様、ぼくの大切な人をお救いください。
なんでもします、ぼくの命を捧げます、お願いします。
"その願い叶えてあげましょう"
空から声がした。
そっと顔を上げると真っ白な人がこちらを見下ろしていた。
"あなたの命と引き換えにあなたの大切な人を救ってあげましょう"
ああ良かった…これでぼくは…
"しかしあなたの命はまだ必要ありません、あなたの命の灯火が消える時その魂を頂きます。さあお行きなさい愛する者のもとへ"
そして真っ白な人は姿を消した。
ぼくはここで死ぬのだと思っていた。覚悟していた。
早くあの子のところに行かなくては!
(あなたの行いはずっと見ていますから)
#神様が舞い降りてきて、こう言った
今夜は月に贄を捧げる日。
その日のためだけに買われたぼく。
周りの人たちはぼくを冷たい目で見る。
でもきみだけがぼくを優しい目で見る。
話しかけてくれたし、一緒に遊んでくれた。
ずっと一緒だよ。ときみはぼくに言ってくれた。
その時に決めたんだ、きみのためにぼくは命を捧げよう、と。
そしてその日が来た。今夜は赤い満月だ。
周りの人たちはぼくを狂った目で見る。
祭壇に着くとむせかえるような血の匂いがした。
そしてそこにはきみがいた。
虚な目でぼくを見るきみの首
ぼくの頭の中は真っ白になった。
ぼくの体を押さえつける大人たち
(あいつもこの日のために買った)
きみの血がこびりついた大きな斧
(生贄はふたり必要なのだ)
ぼくは絶望して叫ぶ
(その絶望が最大の贄だ)
振り下ろされた斧、途絶えた叫び。
#誰かのためになるならば