メイクを落としてすっぴんになり、
明日は土曜日だから、といつもより
遅くまでだらけてみる。
社会集団の中で生きるために作り出した重くて鬱陶しい仮面を取っ払って、何の予定もない自由な休日を過ごす前の日の夜。
さて、明日は何をしようか。
ゲーム?駅前の商業施設に行く?
たまにはお菓子とか作ってみる?
なんてのんびりと考えながら、
お気に入りのベッドにもぐり込む。
目を閉じた一瞬、頭の中を超特急で駆け巡った今日の失敗たちは無視。
今は自由な明日を待とう。
たぶん、明日はいいことばかりだから。
#明日は綺麗なはず
親友が結婚するらしい。
彼女さんの写真を何十枚と見せられ、
酔っ払いの惚気話をずっと聞かされた。
とりあえず、幸せのお裾分けをありがとう。
結婚というのは一種の契約だ。
[この先の人生、貴方と永遠に愛を誓う]
と言うと大袈裟かもしれないが、
自分の結婚がこういう感じだった。
いい感じの場所で彼女の好きなブランドの指輪を渡して、愛を誓った。
そんな愛の契約を大好きな親友が結ぶというのだから、俺は久々に嬉しさで舞い上がっている。
昔から女運が悪すぎる親友が本気で愛した相手なのだ、きっといい人なのだろう。
とにかく、お幸せに。
#愛の永遠を願う
理想郷。ユートピア。
ドラえもんでありましたよね。
声優に永瀬廉さんが出ると聞いて見ました。
なんてボヤきはさておき。
「あなたの理想郷は?」と聞かれて何を思い浮かべるかというと、僕は何も思いつかない。
何でもできる自由な空間?
勉強も仕事もしなくていい?
趣味に没頭してていい?
こんな条件でも僕は行きたいと思わない。
なら、人生に意外と満足してるってこと?
それも多分違う。
多分、僕が欲しいのはそういうものじゃない。
じゃあなんだよ、と言われても思い浮かばないけど、僕は普通に生きていられればそれでいい。
多分、明日が当たり前の世界が僕の理想だ。
#ほんの少しの理想
ふらりと立ち寄った本屋の児童書コーナー。
人気アニメ・映画のノベライズ、子供向けに易しい文になった人気小説、多分超ピュアで甘々な内容なのであろう恋愛小説などなど、私が子供の時やバイトをしていた頃には見なかった本がたくさんある。
そんな本を物珍しく見ていると、
一冊の絵本に目が止まった。
これ、めっちゃ好きだったやつ。
親にも保育所の先生にも読んでもらったな。
途中、かなり怖いシーンがあるってわかってて読んでもビビって……。
なんて思い出しながらページをめくると
その怖いシーンはなくなっていた。
私がもう怖いと思わなくなったのか、
時代の変化に合わせてなくなったのか、
そのあたりはわからない。
でもまあ、いっか。
そうつぶやき、幼少期の温かくて優しい思い出がたくさん詰まったこの本を持って、私はレジへ向かった。
#暖かい世界
中学校生活最後の年、転校した。
顔と名前を一致させるのも一苦労だったクラスメイトを見ていると、去年までの学校生活を思い出す。
もう二度と戻れない生活を求めて毎晩夢の中で藻掻くほど、私はこの生活に疲弊し、絶望している。
毎朝吐き気に耐えながら自転車通学。
前の学校ではできなかったけど。
そんなしょうもないことを考えていると、
必ずといっていいほどあの人の声が聞こえる。
私を最後まで励まし続けてくれて、
最後まで天然な一面を見せたあの人。
私の初恋の人。
相手は担任教師で既婚者で可愛いお子さんもいるのだから、と諦めた恋。
だけど私、最後までいい生徒だったでしょ?
模範だとか優等生だとか褒めてくれたんだし。
だからここで言わせてください。
先生、大好きでした。
#初恋に渇望