蒼井 花丸

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6/1/2025, 6:22:05 AM

「勝ち負けなんて」
保育園の時、運動会のかけっこで惜しくも2位になってしまった子が泣いていた。「あと少しだったのに、あと少しだったのに、」と、正直私は拗らせていた子供だったので(勝ち負けなんて、そんなに泣くことないのに)と思っていた。小学校に上がってからも運動会で私のクラスが最下位になり、クラスメイトの皆が泣いている時でも私は(勝ち負けなんてどうでもいい)と思っていた。私は勝ち負けで泣いた事が1度もなかった、どうでもいいからだ、勝ったって負けたってどうでもいい、正直ささいな事で競っては勝ち負けで引くほど喜んだり、心配になるほど落ち込んでいる人達を尻目にそう思っていた。中学校に上がって私は新しいことを始めてみようとバスケ部に入ってみた。友達もいたし、バスケはたまに遊んだりしていたので「無難かな、」と思いながら入部した。友達もバスケ部に入部していたし、先輩たちは気さくな人ばかりで部活には楽しく取り組んでいた。8月頃地域での少し大きな大会があった、私の通っている学校は元々生徒が少ない事有名なくらいだったのでバスケ部も部員が少なく1年生でも大会に出られた。初めての大会だったので私はいつもより力を入れて練習をしていた、珍しく負けたくないと思ったのかもしれない。大会当日、私は緊張を無理やり押し込めて試合に挑んだ。相手はなかなか強かったが私達が結構押していてこのまま勝てる、と思っていた。だが、チームの誰かがパスをミスしてしまった、そのミスから勢いを失い私達のチームは凡ミスを連発し、最終的には負けてしまった。「あぁ、負けてしまった。」私はそう思った、私は今までと変わらず残念がる事もせず、その日の大会が終わったあとは黙々と返す準備をしてバスに乗り込んだ。バスが発車して、しばらくしてから誰かの嗚咽が聞こえてきた。2年の先輩が悔しそうに歯を食いしばりながら泣いていた。それを皮切りに数人が泣き始めてしまった、誰かの慰める声と嗚咽を聞きながら私は窓の外を見ていた。(今日の試合、シュートミスっちゃったなー、)そんなことを考えていると学校に着いていた。バスから降り、体育館の前に並んで目を真っ赤に晴らした部長が帰りの号令をすると皆散るように帰っていく。私は家が遠いので1人で自転車を押しながら帰った、頭には今日の試合のことしか無かった。(ボール、もう少し上手くシュート出来てたら勝ってたのにな、)気づいたら地面が濡れていた、低く飛ぶツバメを尻目に私は折りたたみ傘を差しながら自転車をノロノロと押した。(今日の天気予報降水りつ30パーセントだったけど傘もっててよかった)「傘、差すの遅かったかな、」目頭の熱を押し込めるようにに目元を濡らした雨をジャージの袖で乱暴に拭った。私はさっきよりも重く感じるリュックを背負い直し、熱いままの目頭を何度も拭いながら人気の無い道を俯きながら帰った。

2/11/2025, 1:32:53 PM

「ココロ」
小さい頃から「どんな物にでもココロがあるんだよ」そう言われて育てられた。ココロは人にはもちろん、小さな人形やお米、本など、様々なものにココロはある、私はそう信じている。だから私はどんなものも大切にした、誰かのココロに愛を与えるほどその愛が返ってくると誰かが言っていたから。大人になっていくにつれ、物をぞんざいに扱う人が増えていった、時には「そんなこと信じてるの?」と、言われたこともある。それでも私はものを大切にする。

2/10/2025, 10:40:17 PM

「星に願って」

私は星に願った。母を返して欲しいと、また会わせて欲しいと、星に願った。そんな事をしても意味は無いと言うことは今なら分かる。いや、分かっていたのかもしれない、分かりたくなかっただけなのかもしれない。ただ、その時は母と会いたかっただけだ、それだけだった。ある日母が見当たらなくて探しても探してもどこにもいない、ただ疑問に思った私は父に「お母さんはどこにいるの?」と、どこかで聞いたような事をきいた、すると父も「お母さんはお空にいるんだよ、お星様が連れて行ってしまったんだ。だから、もうしばらく会えなくなっちゃったんだ」とどこかで聞いたことがあるようなことを言った、私は父のその言葉をイマイチ理解できなかった。だって、家中を探したら母がいつもと変わらない笑顔で出てくると思ったから。やはり子供というものは母親というものが必要なのかもしれない、私は父の話を聞いて少し不安になり母に会いたくなった。だけど、家中を探しても母が見当たらない、そこで実感した、母は居ないのだと、私は泣きじゃくった、母に会えないと分かってしまったから。母が居なくなってからは家の中が以前とは比べようのないくらい寂しくなった、父は以前より仕事熱心になった、以前は仕事を適当にこなしていた訳では無い、恐らく母が居なくなって悲しいのを紛らわせているのだと、幼いながらに理解した。父は仕事にのめり込み夜遅くまで帰ってこなくなった、いつも出来たてを3人で食べていた夜ご飯は1人で作り置きを食べるようになった、寝る前に母に読み聞かせしてもらっていた本はなんだかつまらなくなってしまった。母はいつだってこの家の中心だった、優しくて厳しい人だった。そんなことを考えていると寂しくなってきた、「お母さんに会いたい」気ずけば窓の外に向かってそう言っていた、星に向かって話しかけた、お母さんを連れていかないで、返して、そう言っていた。父の話を信じていたわけじゃない、元々は私は現実主義で可愛げのない子供だった、お星様に母が連れていかれたなんて現実的では無い話を信じるわけない。それでも星に願った、母に会いたかったから、大好きな母に大好きな本を読んで欲しかったから、母の作ったご飯を3人で囲みたいから。私はひたすらに夜が明けても願った、声が枯れても、心の中でも、私は星に願った。