「神様が降りてきて、こう言った」
ってお題長すぎない?
なんと書こうかなーと、電車の中でアレコレ考えつつ、帰り道のコンビニで夕飯を買い。一人暮らしのアパートに帰る。
玄関を開けて、手を洗い荷物を投げ出し、テレビのリモコンつけたら、いかにも神様っぽいお爺さん。
白い服、白い髭。天使の輪っか。
「はろ〜」
お爺さんが、絶対、英語圏の発音じゃない挨拶。
しかも、夜の帷もおりた時間にハローとは。
チャンネル変えたくてリモコンポチポチしても変わらない。
「すまんすまん。神様直通で、ここしか映らないよぉ」
怖い。
「天国YouTube?みたいな?どう?何か見たいところあれば移動するよ??あ、チャット機能あるから送ってね。会話は無理なんだよねー。zoom的な?あーゆー感じにしようかと思ったけどさ、人って色々言葉がちがうじゃん?翻訳アプリの性能イマイチでさ。昔はバベル使ってたんだけどねぇ。時代の変化ってやつ?あなたのいる日本は特に難しいね。言葉が多すぎ。数の数え方さえ言い方違うもんだからさ。もう神様困っちゃう。」
いや、神様から言われたい言葉はこれじゃないわ…
とりあえず
『天国はいいところですか?』
と、送る
「あ!チャットありがとうねぇ。天国?天国ってここ?いいところかって?あぁ、私は好きだよ。好き好きじゃない?人それぞれってゆうかさ。」
神様、フランクすぎんか?
『神様の望みはなんですか?』
「おー!世界平和って答えなきゃならんのかな。まぁ無理無理。みんな幸せって幸せの基準って何って話よね。まぁ、私は全知全能の神!幸せも不幸もないから、強いて言えば、生き物みんな言語統一してほしいかなぁ」
めっちゃ自分勝手やん。
『神様にお願い事したら叶えてくれますか?』
「無理無理!1人のお願い聞いたら誰か困らせないといけなくなるからねー。よくお参りされちゃうと恐縮しちゃう。まぁ、お願いいっぱいくる人はその分頑張ってるだろうから、私は心の支え?になれたらそれで十分だと思ってるよー。何か願い事あるの?」
『毎日つまらない』
「ヒッパルコスかプトレマイオスいるかな?あの人達こそ暇つぶしの名人だと私は思ってるんだ!こっちきたら紹介するよー」
いや、死なんと無理やん。
『生きているうちに何したらいいですか?』
「好きに生きたらいいじゃない!悔いのない人生とか生きてる人がよく言うけど、悔いは残るらしいよ。どんな人も。あっ!そろそろ時間だわ、次トルコなの〜知ってる?トルコ。だから、このチャンネル切る時言わないといけない言葉があるの。トルコ語で平和って意味なんだけどね。って、あ、日本の映画のセリフだね。じゃあね、こっち来たらまたお会いしましょう」
「バルス」
ぷつりとテレビが、切れた。
神様が降りてきて、言って欲しい言葉は一つも見当たらない。
お気楽な終活中ー。
別に死ぬ予定があるわけではない。
もはや趣味の域。
墓は要らぬ。
葬儀も要らぬ。
残す財産もない。
死んだ事を報告してほしい人もおらん。
自分が死んだとて、泣いてくれる人もまたおらんから、終活ノートは白紙が多い。
使ってる銀行やカードを書いとく程度なもん。
棺に入れて欲しいものは
お気に入りの漫画全巻と、写真数枚。
趣味らしい趣味もなく、寂しいなと、白紙のノートに思うだけで、だからと言って今から何かする気はない。
だから、できるだけ、自分の遺体は誰かのために役立てばいいと思う。
使える臓器は使ってもらいたい。
だからと言って健康に気をつけようなんぞ微塵も思わない。使うならどうぞって程度。
医学生にオモチャみたいに切り刻まれるぞ。なんて言う人もいるけど、私の遺体でよけりゃ切り刻んで遊んでくれて結構。
切り慣れてる人。縫い慣れてる人になってどうぞ良い医者になってくれ。
死んだらどうせ焼かれる身。
生きた分だけ自分のために使わせてもらうんだから、死んで動かせなくなったら、誰かのために役に立てたら生きた意味があるじゃない。
子供の頃から病気がち、そのせいか背が低い。
しかも、太れない体質というのか、食事制限の多かった幼少期を引きずっているのか少食。
大人になった今も丈夫な方じゃない。
月に一度の発熱は当たり前。
でも、子供の頃からこうだから、熱のときの対処法なんか熟知して、自分はこんなもんだと諦めつつも世の中に順応して多少の熱じゃ休んだりしない。
むしろ、今日はどこも痛いとこない!って日は年に何日かしかないから不健康が普通。
小さい犬はよく吠えると言われるけれど、本当にそうだな。と自分に思う。気が強い。負けん気が強い。度胸がある。良くも悪くもそうなった。
しかしながら、小さく細い私は病弱キャラの方がウケがいいと気づいた思春期。
徹底したキャラ作りはなんてことはない。無口でいたら勝手に周りが心配してアレコレやってくれる。
手をだしたいー!私がやりたいー!を我慢するのがしんどい程度。
キャラ確立した後は、そのまんま大人になった。
ちょっと顔色悪いだけで心配してくれる周囲の人に申し訳ない気持ちばかりで、会社が辛いなんて言い出せない。じゃあ最初からやれよって村八分にされそう。
そんなとき、なんとなく付き合ってた彼氏からプロポーズ。
お決まりの「君を守っていきたい。」って。
まぁ、そういう人生もあるよねって思って結婚。
職場内恋愛だった事もあって、あっさり専業主婦。
家事が好きではない。それしかやる事がないだけだ。
退屈でたまらない人生をあと何十年も送るのかと思うとゾッとした。まさに籠の鳥。
夫に「働きたい」って言ってみた。
別れたいとは思わなかったから。
「やっぱり?」と、したり顔の夫。
気の強さも負けず嫌いも見抜かれてたみたい。
ちょうど折れそうなタイミングでのプロポーズしたそうな。
マジか。
「外の自由を謳歌して、僕のお嫁さんでいてね。家事は半分こにしよう。」
夫とは職場で出会ったと思っていたけれど、夫は私をもっと前から知っていたらしい。いつどこでと聞いても教えてもらえない。記憶力は悪くない方だと思うけど。
悔しいから教えてくれるまで一緒にいようと思う。
鳥かごの中を出たり入ったり。
ナイチンゲールみたいに歌えないけれど、夫と鳥かごの中にいる時間も悪くない。
夫がいない。
いないっていうか、在宅時間がほぼない。
平日は日のでた頃に帰宅して、着替えて出社。
休日は慈善事業団体のなんたらでハシゴするほど忙しいらしい。
結婚した意味…。
あぁ、子供がいますわな。もうすぐ幼稚園。
子供は父親の認識はできない。仕方ない。いないんだもん。
子供には、たまにいる私の友達と認識されてる程度な夫。
自営の後継長男な夫。
手取りの収入15万円。
笑っちゃうね。どうやって暮らせるのさ。
独身時代の貯金崩しながらなんとか食べていけてる。
早く仕事復帰したいけど、結婚を機に夫の地元の田舎にきたもんだから、どうしようもない。
離婚覚悟かなぁ。
って言うのも夫は彼女がいると思うから。支えようなんて気にもならない。
汗かいたからコンビニで買った。というパンツが有名ブランドなわけない。
どうしたもんかな?
実家に泣きついてみようかな?
と悩んでいた頃、懐かしい男友達から電話がかかってきた。
「久しぶりー。元気?」なんてありふれた会話と、私の愚痴を聞いてもらった。
電話の友達は、仕事で海外に行く前の連絡だったらしい。
「東京のマンション。いつ帰ってくるかわかんないから残すつもりだったんよ。しばらく住んでていいよ。水道光熱費は奢っちゃるわーはっはっは」と。
逃げたかった、夫から。
逃げたかった、田舎から。
そこから手を差し伸べてくれた友達。
20年来の友達。
異性だけど、ずっと友達。
これからも友達でいたいから、
「気持ちだけ貰っとく」
って言って、少し泣いて。
いつか、アイツが困ったらそっと手を差し伸べられる人になろうと決意した。
友達は自分を強くしてくれた存在。
特別クラスの男の子。
たったひとりぼっちのクラスに通う子。
何かの病気で、普通のクラスには通えない子。
誰かと話をしているところを見た事ない。
先生とか送り迎えのお母さんとも話をしてるの見た事ない
でも、見た目は普通の子。
普段、どんな授業うけてるかもわからない子。
先生たちは私達には何も言わない。
でもみんな知ってる子。
私達より少し早く帰る子。
一階の窓際の席になった私は、その子と先生がお母さんの迎えを待っているのを見た事がある。
夏の暑い日に、太陽に向かって伸びたひまわりを見てその子はニッコリ笑った。
私以外誰も見てないと思う。多分。
迎えに来たお母さんは凄く美人でびっくりした。
先生もにっこりして、男の子の手は先生からお母さんへ。
瞬間、男の子の眉に皺が寄った。
さっきまでひまわりみて笑ってたのに。
お母さんは優しい笑顔で何か話しかけてから男の子の手を引いて歩き出す。
それからなんだか、男の子が帰る時間は観察した。
綺麗なお母さんはいつも違う服で、キラキラ。
男の子は、お母さんが来ると眉に皺を寄せる。
帰りたくないのかな?
ある日、私のクラスのサボテンが花を咲かせた。
男の子が、サボテンの花を見て笑った気がした。
だから少し手を振ってみた。
男の子も手を振りかえしてくれた。
日の加減で笑顔かどうかわからない。
男の子をじっと見つめたけれど、男の子はぐんっと強い力で校門の方へ引っ張られて行った。
それから男の子は学校に来ていないみたいだった。
いつもの時間にいないから。校庭に。
夏休み前なのに席替えがあったから、また通い出したのかもしれないし。来ていないかもしれない。
二学期になったら特別クラスに遊びに行ってみようかな。って思っていたら、夏休みの間に男の子死んじゃったっぽい。
学校が写し出されたニュース。同じ学年の男の子。
その子が死んだってニュースだけ。あの子かな?あの子しかいないよね?名前知らない同級生は。
ニュースではお友達と川に遊びに行って溺れちゃったって。
私達もよく行く近所の小川。
あの子が来ているのは見たことないけどなぁ
お母さんはフィルムを貼られたような映像で「なんであの子だけがこんな目に…」と泣き喚くテレビ映像。
私の親からも危ないからあの川に行くなと言われた。
ひまわりが咲いているのを見るとあの子の笑顔が見える。何年経っても。
私しか知らないあの子の笑顔だったら悲しいな。