子供の頃から病気がち、そのせいか背が低い。
しかも、太れない体質というのか、食事制限の多かった幼少期を引きずっているのか少食。
大人になった今も丈夫な方じゃない。
月に一度の発熱は当たり前。
でも、子供の頃からこうだから、熱のときの対処法なんか熟知して、自分はこんなもんだと諦めつつも世の中に順応して多少の熱じゃ休んだりしない。
むしろ、今日はどこも痛いとこない!って日は年に何日かしかないから不健康が普通。
小さい犬はよく吠えると言われるけれど、本当にそうだな。と自分に思う。気が強い。負けん気が強い。度胸がある。良くも悪くもそうなった。
しかしながら、小さく細い私は病弱キャラの方がウケがいいと気づいた思春期。
徹底したキャラ作りはなんてことはない。無口でいたら勝手に周りが心配してアレコレやってくれる。
手をだしたいー!私がやりたいー!を我慢するのがしんどい程度。
キャラ確立した後は、そのまんま大人になった。
ちょっと顔色悪いだけで心配してくれる周囲の人に申し訳ない気持ちばかりで、会社が辛いなんて言い出せない。じゃあ最初からやれよって村八分にされそう。
そんなとき、なんとなく付き合ってた彼氏からプロポーズ。
お決まりの「君を守っていきたい。」って。
まぁ、そういう人生もあるよねって思って結婚。
職場内恋愛だった事もあって、あっさり専業主婦。
家事が好きではない。それしかやる事がないだけだ。
退屈でたまらない人生をあと何十年も送るのかと思うとゾッとした。まさに籠の鳥。
夫に「働きたい」って言ってみた。
別れたいとは思わなかったから。
「やっぱり?」と、したり顔の夫。
気の強さも負けず嫌いも見抜かれてたみたい。
ちょうど折れそうなタイミングでのプロポーズしたそうな。
マジか。
「外の自由を謳歌して、僕のお嫁さんでいてね。家事は半分こにしよう。」
夫とは職場で出会ったと思っていたけれど、夫は私をもっと前から知っていたらしい。いつどこでと聞いても教えてもらえない。記憶力は悪くない方だと思うけど。
悔しいから教えてくれるまで一緒にいようと思う。
鳥かごの中を出たり入ったり。
ナイチンゲールみたいに歌えないけれど、夫と鳥かごの中にいる時間も悪くない。
夫がいない。
いないっていうか、在宅時間がほぼない。
平日は日のでた頃に帰宅して、着替えて出社。
休日は慈善事業団体のなんたらでハシゴするほど忙しいらしい。
結婚した意味…。
あぁ、子供がいますわな。もうすぐ幼稚園。
子供は父親の認識はできない。仕方ない。いないんだもん。
子供には、たまにいる私の友達と認識されてる程度な夫。
自営の後継長男な夫。
手取りの収入15万円。
笑っちゃうね。どうやって暮らせるのさ。
独身時代の貯金崩しながらなんとか食べていけてる。
早く仕事復帰したいけど、結婚を機に夫の地元の田舎にきたもんだから、どうしようもない。
離婚覚悟かなぁ。
って言うのも夫は彼女がいると思うから。支えようなんて気にもならない。
汗かいたからコンビニで買った。というパンツが有名ブランドなわけない。
どうしたもんかな?
実家に泣きついてみようかな?
と悩んでいた頃、懐かしい男友達から電話がかかってきた。
「久しぶりー。元気?」なんてありふれた会話と、私の愚痴を聞いてもらった。
電話の友達は、仕事で海外に行く前の連絡だったらしい。
「東京のマンション。いつ帰ってくるかわかんないから残すつもりだったんよ。しばらく住んでていいよ。水道光熱費は奢っちゃるわーはっはっは」と。
逃げたかった、夫から。
逃げたかった、田舎から。
そこから手を差し伸べてくれた友達。
20年来の友達。
異性だけど、ずっと友達。
これからも友達でいたいから、
「気持ちだけ貰っとく」
って言って、少し泣いて。
いつか、アイツが困ったらそっと手を差し伸べられる人になろうと決意した。
友達は自分を強くしてくれた存在。
特別クラスの男の子。
たったひとりぼっちのクラスに通う子。
何かの病気で、普通のクラスには通えない子。
誰かと話をしているところを見た事ない。
先生とか送り迎えのお母さんとも話をしてるの見た事ない
でも、見た目は普通の子。
普段、どんな授業うけてるかもわからない子。
先生たちは私達には何も言わない。
でもみんな知ってる子。
私達より少し早く帰る子。
一階の窓際の席になった私は、その子と先生がお母さんの迎えを待っているのを見た事がある。
夏の暑い日に、太陽に向かって伸びたひまわりを見てその子はニッコリ笑った。
私以外誰も見てないと思う。多分。
迎えに来たお母さんは凄く美人でびっくりした。
先生もにっこりして、男の子の手は先生からお母さんへ。
瞬間、男の子の眉に皺が寄った。
さっきまでひまわりみて笑ってたのに。
お母さんは優しい笑顔で何か話しかけてから男の子の手を引いて歩き出す。
それからなんだか、男の子が帰る時間は観察した。
綺麗なお母さんはいつも違う服で、キラキラ。
男の子は、お母さんが来ると眉に皺を寄せる。
帰りたくないのかな?
ある日、私のクラスのサボテンが花を咲かせた。
男の子が、サボテンの花を見て笑った気がした。
だから少し手を振ってみた。
男の子も手を振りかえしてくれた。
日の加減で笑顔かどうかわからない。
男の子をじっと見つめたけれど、男の子はぐんっと強い力で校門の方へ引っ張られて行った。
それから男の子は学校に来ていないみたいだった。
いつもの時間にいないから。校庭に。
夏休み前なのに席替えがあったから、また通い出したのかもしれないし。来ていないかもしれない。
二学期になったら特別クラスに遊びに行ってみようかな。って思っていたら、夏休みの間に男の子死んじゃったっぽい。
学校が写し出されたニュース。同じ学年の男の子。
その子が死んだってニュースだけ。あの子かな?あの子しかいないよね?名前知らない同級生は。
ニュースではお友達と川に遊びに行って溺れちゃったって。
私達もよく行く近所の小川。
あの子が来ているのは見たことないけどなぁ
お母さんはフィルムを貼られたような映像で「なんであの子だけがこんな目に…」と泣き喚くテレビ映像。
私の親からも危ないからあの川に行くなと言われた。
ひまわりが咲いているのを見るとあの子の笑顔が見える。何年経っても。
私しか知らないあの子の笑顔だったら悲しいな。
「もしもタイムマシーンがあったなら」
そうですか。ついにできたんだ。作られた人はさぞお喜びの事でしょう。
なんとか賞と名のつくものを総なめになさる事でしょう。
「核を作りました」
の、ロバートオッペンハイマーさんと同じ軌跡にならないように気をつけてください。
使いたい人?
私利私欲に塗れた人か、ただの興味本位な考えなしか。
使い方に法律を作る人は使うことを前提として考えるのでしょうか?
過去の何を変えてより良い今となるでしょうか?
未来の何を知って今を変えられるでしょうか?
誰にも知られる事なくタイムマシーンを作ることができたとして、うまい具合に自分だけの人生を変える事ができますでしょうか?
それとも1人一台のタイムマシーン配布になりますでしょうか?
史を学ぶ必要がなくなったら、未来を予想できなくなったら、とても悲しい事だと思います。
「不老不死が可能となりました。」
今度はそんな人が現れるかもしれません。
そうなると、人は生き物ではなくなります。
ロボットでしょうか?
失敗したら、やり直しが出来ない事もある人生の方がよっぽど面白いし、予測不能な出来事がある明日の方が楽しみです。
告白の返事を待つ時間。受験の合否。自分の死の時。人生の醍醐味はわからない時間にこそドキドキできるように思いますが。
もしもタイムマシーンがあったなら、壊してしまった方がいいと思います。
銀行強盗が雪山に逃げ込んで、寒さに耐えきれずに現金を燃やして暖をとったって言うお話あるよね。
私の実家は貧しかったからお金を燃やすなんてと幼心に思ったけれど、冬の寒い日にストーブがつけられなかった日には何か燃やしてでも暖を取りたいと思った。
私は勝気で自分で言う事ではないけれど、美人。
貧しい生活だけは嫌だの一心で勉強し、良い大学も出た。その後もとんとん拍子で優良物件と言われる男と結婚。
家と言えないほどのお屋敷に住む。
広すぎる庭は定期的に庭師が管理してくれる。
食品は無農薬で安心安全な物を定期宅配。
月に一度来るデパートの外商さんに欲しいものを言えばその日のうちに届いたりする。
美容師もエステも、なんなら病気の時すらその手のプロが来てくれる。
子供は結婚した翌年から次々と生まれ、年子ばかりの子沢山。
子育ては母の仕事と、姑にはマリア様の様な嫁を求められ、夫には常に綺麗でいて欲しいと言われる。
最も困るのが子供の教育。
有名幼稚園に通わせる為の幼児教室は胎児の頃から始まる。
最低でも有名私立小学校。
子沢山な私だけど子育ては私の仕事とばかりの姑。
そうやってもらって育った一人っ子の夫も姑と同じ意見らしい。
ご飯はお母さんの手作りで。
お母さんが手作りした幼稚園道具で。
洗濯物のたたみ方、箸の持ち方はお母さんが教えるもの。
寝る時こそ親子の時間ですとばかりに日本だったりグリムだったりの童話を子供が飽きるまで読む。
次の子が生まれ何年も何年も何度も読む。
頭がおかしそうになる。
私の望むお金に困らない暮らしは手に入れた。
失ったものはない。
ただただ今、欲しいものはと聞かれたら人権しかない。
私は人でありたい。