Machi

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8/16/2024, 2:57:30 AM

夜の海を見つめる。
潮騒に耳を澄ませば、自分の悩みを消してくれるような気がする。
決してそれは掻き消すといった類ではなく、言うなれば覆って隠してくれるような、そんな音。
夜の海は恐ろしい。それと同時に、とても美しい。

8/15/2024, 1:57:32 AM

自転車に乗って坂を下る。
生温い風が頬を勢い良く撫で、前髪がバサバサと乱れる。
汗が背中や首を伝うが、それすら愛しい。
一つ、大きな赤い屋根の家が見えてくる。その奥には海が、自由が広がっていた。
潮騒と海の匂いを全身に感じながら、自転車を止める。
その家に入る前に、庭の柵に身を乗り出して息を思い切り吸った。
少し酸っぱい、夏の香り。
晴れ渡る青空を少し見つめてから、柵を降りて家の玄関に向かう。
赤い屋根と青い空がよく映える。やはりこの季節は、世界全体が格別だ。見慣れたものでも初めて見るものでも、どんな景色も美しい。
ガチャリと鍵を回す。少し錆のついた、古風な鍵。年代物ではなく、こういうデザインだ。
扉を開く。優しい木の香りがする。
風がそよいで、木が揺れた。

8/11/2024, 12:27:44 PM

麦わら帽子が飛んでいた。
ひらりひらりと風に舞い、地面に落ちてしまいそうになった瞬間。
小さな手がそれを拾う。
少年は数秒その麦わら帽子を見つめ、持ち主は誰かと周囲を見回した。
小学一年生程度の少年が、美しい青空の下、向日葵畑の近くの無人駅で麦わら帽子を持っている。
傍から見ればなんとも絵になる光景だった。
キョロキョロと周りを探す少年の目に、一人の女が写る。
白の夏らしいワンピースに、麻でできたショルダーバッグを肩にかけている髪の長い女。
夏の似合う美しい女であったが、少年はそんなことよりも帽子の持ち主を見つけられたことに歓喜していた。
周囲に人間は見当たらない。つまり麦わら帽子この人のものだと判断する。現に女は首を回して何かを探す素振りをしていた。
「はい、お姉さん!落としたよ!」
駆け寄って麦わら帽子を届ける少年の笑顔は太陽の如く明るかった。
女は笑顔で帽子を受け取る。
「ありがとう。良い子ね。」


その日、その夏の暑い日。
一人の少年が、女と共に姿を消した。

8/5/2024, 10:29:24 AM

『鐘の音』



鐘の音が鳴り響いた。
鐘が六つ鳴ると、私達は勢い良く起き上がる。
ベッドから出て、着替えて、準備を済ませて、みんなで朝食を取る。
あの鐘の音は眠っている私達のわくわくを解放して、素晴らしい一日の始まりを告げる。

8/1/2024, 10:44:21 AM

『明日、もし晴れたら』



明日、もし晴れたら。
俺とあの人は会うことができない。
雨の日だけ会うという約束。梅雨明けの、晴天の明日の天気予報。
流れるニュースをぼうっと見ながら、そんな事を考える。
しばらくは毎日のように会っていた。なのに、明日からは会えない。
遣る瀬無い感情を押し込むように、会えないのが日常なんだと身に思い知らせるように、手にぶらつかせていたビールを煽った。

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