今一番欲しいもの
早苗「ショーゴくんは何があるかい?」
翔吾「欲しいもの、か。アイスだな」
早苗「お、いいね。ちなみに僕はね、涼しい部屋!」
翔吾「お前が外に出たいって言い出したんだろうが」
早苗「そうだね。僕が散歩にいこうと言い出したんだ。でも、正直ここまで暑いとは思わなかったんだよ。それにちょっとそこまで~という軽い距離のつもりだったんだ」
翔吾「どこが軽い距離だよ」
早苗「いやあほんとに。思ったよりいけちゃった自分に驚きだよ」
翔吾「まあいい。とりあえず、帰ってアイス食うぞ」
早苗「その前にそこの自販機でジュース買おうジュース!」
私だけ
僕だけが知っている彼の表情だって? さあ? 僕はわからないな。
と、言うのも、僕が出会ったのは高校の入学式のときでね。実質2年くらいしか付き合いがないんだよ。だから、もしここで僕だけが知っているかもみたいな、淡くてくすぐったい独占欲のようなものを感じれる表情があったとして、実は僕と会う前にはその表情をよくしていたかもしれない、なんて事があるんじゃないかと思うんだ。
と、いうわけで、残念だけどその質問には答えられません。
ああ、でも、僕の方は彼だけにしか見せていない顔があります!
どんな表情かは秘密。でも、この話はまだ君にしか明言していないから、その辺りは彼に言わないでくれたまえ!
終わりにしよう
早苗「……ショーゴくん。これ以上は……ムリだ」
翔吾「そうだな。もう、終わりにするか」
早苗「っ、ハァ……。ようやく、終わった……」
翔吾「まあまあ頑張ったんじゃねーの」
早苗「いやあ思ったよりしんどかったなあ。たかが三十回と甘くみていたよ」
翔吾「五十くらい行けばよかったんだがな。まあ運動してないとこんなもんか」
早苗「君、それ僕が貧弱だって言いたいんだろう?」
翔吾「つっても腹筋三十回だからな。こんなもんだろ」
手を取り合って
早苗「我が校のフォークダンスは毎年女子が多すぎて男性役にまわるものが出てくることで有名なのだが、面白そうだから僕も男性役をしたいと言ったらダメだと言われてしまったよ………」
翔吾「なんでダメだったんだよ。身長か?」
早苗「確かに僕はそこまで身長はないけども、女子のなかでは普通の部類だぞ。だからそれは違うだろう。というか、その理由はきちんと聞いたよ。なんでもショーゴくんとフォークダンスで手を取り合うにはそちらの方が都合がいいからそうしなさいということらしい」
翔吾「完全におもちゃにされてんな」
早苗「そうだね。からかわれているね。まあ僕はそれで全然構わないんだがな。問題は僕とショーゴくんが手を取り合って踊るのは難しいのではないかと思ったんだ」
翔吾「どういうことだよ」
早苗「簡単にいうと身長の問題とまわる順番さ。フォークダンスの先頭は背の高い男子と背の低い女子のペアから背の順でいくことになる。おそらく君は背が高いから先頭に近く、逆に僕は普通であるから真ん中くらいからのスタートだ。そして躍りはオクラホマミキサーだから踊ったあと男子は前の女子、女子は後ろの男子へ交代する。ということは、君より背の低い男性からスタートしたらそのまま背の低い男性の方へ流れていくので一周しない限り君の元へはいけそうにない。そしてうちの学校のフォークダンスはせいぜい二曲しかない」
翔吾「なるほどな。だから難しいってことか」
早苗「そうなんだよ。しかしそれを彼女達に言ってやるのは野暮が過ぎると思ったからやめたんだが……言ってあげた方が親切だっただろうか」
翔吾「それはわかんねえな。まあリハで一回やっからそんときに気づくだろ」
早苗「確かに……! なら杞憂だな。ありがとうショーゴくん!」
翔吾「おー」
早苗「しかしあれだな。フォークダンスで君と踊れないのなら、手を取ってドキドキしている君がみれないという事になる。いやあ残念だなあ。君が顔を少し赤らめて僕の手を取る姿を見てみたかったぞ」
翔吾「なら、今するか?」
早苗「え」
これまでずっと
これまでずっと君を振り回していて、これからも振り回すかもしれないのに、「別に」と言ってなんだかんだで受け入れてくれた君は、本当に優しい奴だったよ。