手を取り合って
早苗「我が校のフォークダンスは毎年女子が多すぎて男性役にまわるものが出てくることで有名なのだが、面白そうだから僕も男性役をしたいと言ったらダメだと言われてしまったよ………」
翔吾「なんでダメだったんだよ。身長か?」
早苗「確かに僕はそこまで身長はないけども、女子のなかでは普通の部類だぞ。だからそれは違うだろう。というか、その理由はきちんと聞いたよ。なんでもショーゴくんとフォークダンスで手を取り合うにはそちらの方が都合がいいからそうしなさいということらしい」
翔吾「完全におもちゃにされてんな」
早苗「そうだね。からかわれているね。まあ僕はそれで全然構わないんだがな。問題は僕とショーゴくんが手を取り合って踊るのは難しいのではないかと思ったんだ」
翔吾「どういうことだよ」
早苗「簡単にいうと身長の問題とまわる順番さ。フォークダンスの先頭は背の高い男子と背の低い女子のペアから背の順でいくことになる。おそらく君は背が高いから先頭に近く、逆に僕は普通であるから真ん中くらいからのスタートだ。そして躍りはオクラホマミキサーだから踊ったあと男子は前の女子、女子は後ろの男子へ交代する。ということは、君より背の低い男性からスタートしたらそのまま背の低い男性の方へ流れていくので一周しない限り君の元へはいけそうにない。そしてうちの学校のフォークダンスはせいぜい二曲しかない」
翔吾「なるほどな。だから難しいってことか」
早苗「そうなんだよ。しかしそれを彼女達に言ってやるのは野暮が過ぎると思ったからやめたんだが……言ってあげた方が親切だっただろうか」
翔吾「それはわかんねえな。まあリハで一回やっからそんときに気づくだろ」
早苗「確かに……! なら杞憂だな。ありがとうショーゴくん!」
翔吾「おー」
早苗「しかしあれだな。フォークダンスで君と踊れないのなら、手を取ってドキドキしている君がみれないという事になる。いやあ残念だなあ。君が顔を少し赤らめて僕の手を取る姿を見てみたかったぞ」
翔吾「なら、今するか?」
早苗「え」
これまでずっと
これまでずっと君を振り回していて、これからも振り回すかもしれないのに、「別に」と言ってなんだかんだで受け入れてくれた君は、本当に優しい奴だったよ。
目が覚めると
早苗「……」
翔吾「なんだよ」
早苗「いや、なんでもない。おはよう」
翔吾「おう。ずいぶん寝てたな」
早苗「ああ。なんだか最近眠くてね。仮眠をと思いこうして机につっぷしていた訳なんだが、どうも寝すぎてしまったようだね」
翔吾「ふーん。ま、目え覚ましたんならいい。帰るぞ」
早苗「そうだね。……ふふ」
翔吾「何笑ってんだよ」
早苗「いいや。少しね、さっき目を覚ましたときに見た君の顔を思い出して」
翔吾「顔?」
早苗「ああ。君、そんな顔ができたんだなって少し思っただけさ」
七夕
早苗「ショーゴくん。それなんだい?」
翔吾「笹」
早苗「うん、わかるよ。今日は七夕だからね。でも急に家に持ってこられてもだな。飾るところがないんだが……」
翔吾「安心しろ。花瓶もある」
早苗「う、うん。そうだね。花瓶も用意してあるんだね。いや、でも、こう、僕の机の上はもので溢れかえっているから置くには難しいと思うんだ」
翔吾「あ? 誰がお前の部屋の机の上に飾るって言ったよ」
早苗「え。違うのかい?」
翔吾「つーかお前の父親が笹持って来てくれって言ったんだぞ。リビングに飾るとかなんとかで」
早苗「えっと、君はいつから僕の父と仲良くなったんだい? というか、どうしてそんな話になっているんだい?」
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子供の頃は七夕飾りをつくって縁側で星を眺めていましたが、今はそんな風流なことを一つもやらなくなりました。
笹を用意するの、思ったより大変なんですよね……。
この道の先に
早苗「なあショーゴくん。ちょっと冒険をしてみないか?」
翔吾「冒険? なんのだよ」
早苗「ほら、この道、僕らはあまり通らないだろう? もっというと、この道をまっすぐいった先に何があるのか、僕らは知らない。だからこの道の先を行ってみないかと言いたいんだ」
翔吾「そういうことならまあいいぜ」
早苗「そうかそうか。じゃあ行こう! 何が待ち構えているんだろうな? 楽しみだ」
翔吾「行き止まりだった気がするんだけどな」
早苗「……待ってくれたまえ。君、行ったことあるような口振りじゃないか。どういうことだ?」