つまらない事やくだらない事でも話し合ったり笑い合ったりしていた。
二人の星を探しに行く旅をしよう、なんて言いながら過ごす日々がすごく楽しかった。
なんか、ふわふわしていた。
私は世間に適合する方法がわからなくて置いてけぼりを食らっているような気がしていたけど、それでも歳を重ねる毎に、つまらない事やくだらない事を重ねて重ねて積み重ねていくうちに、普通を装ってひっそりと生きる事を覚えた。
普通を装う事は、武装だ。
外に出る時は、武装が必要だ。
「もっと楽に生きたらいいのにね」
あぁ。本当に。
あの頃のように丸腰で、ふわふわとしていたいよね。
そして何処か遠くにあるかもしれない二人の星に想いを馳せる。
以前、手術をするために入院したことがある。
といってもそんなに深刻なものでもなかったし、入院も10日間位だし、周りは年配の人ばかりだけど仲良くなる必要もないし、暇だけど本でも読んでいればいいかと、大袈裟にはしたくなかったので家族や親族には気楽な感じて伝えていた。でもやっぱり不安だった。
そして当日の朝、「あなたも今日、手術するの?」と、私より少し年上っぽい女性に声をかけられた。なんでもその彼女もこれから手術らしくて、でも不安だからと私に声をかけたらしい。そうなんですよ〜と軽い会話をして、お互い頑張ろうねと別れた。
彼女とたった数分の会話だったけど、なんだか楽になった気がした。
退院する前、たまたま彼女の病室を見つけたので少し話をした。無事に終わって良かったね。
そして別れた。
それっきりなんだけどね、でもあの時声をかけてもらって嬉しかった。
今も何処かで元気に暮らしているのかな、なんて時々思う。
私はいつも探していた。
自分探しとか、そういうのではなくて自分に似たものを探しているような気がする。
そこにヒリヒリとした刺激やゆるゆるとした安堵などを求めている訳ではないけど、やみくもに手を出してはなんか違う…を繰り返している。
明日、もし晴れたら少し遠くへ行ってみよう。
何かが見つかるかもしれない。
例え相手がどんなに大切な人であっても、クールタイムは必要なのです。
だから一人でいたい、時もある。
そしてその一人の時を、邪魔されたくない。
私のスマホの待ち受け画面は、子どもの頃に飼っていた犬の写真なのです。
名前は「まる」
まるのお世話、ごはんや散歩などは私がほとんど担っていました。
生き物を飼うということは、命と命のぶつかり合いですからね、やっぱり大変でしたけど、でもそれが自分の礎になっているようにも思えます。
まるの無垢で澄んだ瞳をこの手で抱いていたあの頃は、何ものにも代え難い特別な時間でした。
自分の人生の中でその時だけが、鮮やかな色彩で満ちていた様な気さえするのです。
今も私のスマホの中では、まるが澄んだ瞳を向けてくれています。
これからもずっと、澄んだ瞳で笑いかけてくれるのです。