テーマ 突然の別れ
「...」
静かな部屋には乱雑に置かれた絵の具やキャンバス。筆は左手に持っていた。
ーー 一週間前 ーー
「..あとこれだけか」
キャンバスや絵の具が不足してきたから、右手にバッグを持って街に出て買い物をしていた。
「..何処がいいかな」
キャンバスにも種類はある。悩みながら歩道を歩いていたら、
「危ない!」
誰かが叫んだ。何事かと思ったらこっちに車が来ていた。幸い大事には至らなかったが、大切なものを失った。
いつの間にか、本物ではない手が右で動いていた。
おわり
テーマ 恋物語
手を伸ばした。そこにはきれいな一本だけ生えてる桜の木の花びらだった。
「きれいに咲いたね」
空を見ながら喋る。最後にあいつとあった場所。そして、たくさんのことがあった場所。
ーー 一年前 ーー
「ここに人が来るのは珍しいね」
ふと桜の木を眺めていたときに後ろで言われた。
「そうなんですね」
そっけなく話していた。自分が帰ろうとしていたとき、あいつは元気に桜の下で笑った。
「またここで会おう!」
ーー 次の日 ーー
「桜のように散れたらな...」
そうボソッと呟いた。
「そうなっちゃうと君を知ってる人が悲しむよ」
「そんなことないでしょ」
うとうとしているあいつがいた。
「ごめん ちょっと寝る」
そう言って桜の下で寝た。上着をかけようとしてあいつに触ったら体温が消えていっていた。
「おい!どうしたんだよ!」
声を荒げて言った。ぜんぜん起きない。やばい。
体温は段々と奪われていき、冷たいあいつが残っていた。
死んだ。その事実で涙が出てきた。恋も桜と散ってしまったようだ。
おわり
テーマ 子どものままで
「あと十年で死にますね」
単刀直入に医師に言われた。その医師は馬鹿にでもわかる「躊躇」をしなかった。どうせ早く診察を終わらせたかったんだろう。
「え...」
あと十年で子供が死ぬことを受け入れられないのは無理ないな。医師があんなだから。
「....それでは終わりです」
「........ありがとうごz」
ドンと自分が強く扉を閉めた。あんなやつの診察二度と受けるか。
ー 十年後 ー
ほら生きてる。嘘だったじゃん。人を犯して楽しんでたのかなあの馬鹿医者。
「..ッ」
何故か頭が痛くなっていっている。膝から崩れ落ち呼吸が粗くなっていく。
「「.ど.、し.、か」」
周りにいた人が話しかけてくれる。でも何も聞き取れない。
ああ。当たってしまった。
おわり
テーマ 忘れられない、いつまでも
「あの公園まで競争な!」
「あ”!?ちょ」
いきなり言われた。そして後ろにいたあいつを見ようとした瞬間カーブミラーに見えた車があいつの近くに走ってきているのが見えた。
「止まれ!」
どっちに言っているのかわからないが、叫んだ。あいつは負けまいと止まらず走る。
「キキーッ」
大きなブレーキ音が響いた。
「あ、あぁ。」
自分は膝から崩れ落ちた。
おわり
テーマ 1年後
「来年も一緒!」
ベットで半分体を起き上がらせて言っているあいつが離れない。
「約束!」
あの頃は良かった。
ーー 一ヶ月前 ーー
「ピーピーピー」
自分の心音がやけに聞こえる。
扉の上には「手術中」という文字が出ている。
「....」
喋らず目を閉じているあいつがいる。
「..す、.せ.ん」
あいつの隣にいた医者の言葉は聞き取ろうとは思えなかった。
「約束守ってくれよ...」
虚しい言葉が空に溶かされていった。
おわり