しろくま

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11/23/2023, 2:45:58 PM

【落ちていく】

フワフワした毛布にくるまり、お気に入りの抱き枕をハグして目を閉じる。
「眠い?」
髪を撫でてくれる君の大きな手が気持ちいい。
「今日も良く頑張ったな。偉いな」
ぬくもりが眠気を誘う。
「明日も大丈夫。うまくいくよ」
眠りに落ちていくこのわずかな時間。
やわらかな君の言葉に不安とか、怖さとか、そんなネガティブなものが消えていく。
こうしておれは優しい眠りに落ちていく。

11/23/2023, 1:35:36 AM

【夫婦】

「いい結婚式だったね」
ほろ酔いの君が引き出物の紙袋を大事そうに膝に抱えて言う。
俺らは二次会は遠慮して、タクシーを拾って帰宅の途中だ。
同級生の結婚式はあたたかくて、和やかなもので、俺も君も終始笑っていた。

「あいつとあの子がくっつくなんて、高校時代には思いも寄らなかったよなぁ。2人とも高校の時はぜんぜんだっただろ?」
「縁って不思議だね」
「あー、あいつらも遂に夫婦ってわけかぁ。なんか変な感じだな」
「そーだねー」
君は小さく笑って、それから引き出物の入った紙袋に視線を落とす。
人気のパティスリーの焼き菓子とか、小洒落たワインが、今日の幸せな2人にぴったりだった。

じゃあ、俺らは?
俺らには?

「……なぁ、これからおまえんち、寄ってもいい?腹減ったからなんか食わせてよ」
ぶっきらぼうな俺に、君は「卵かけご飯くらいしかねぇぞ」と顔を上げた。
「いいよ。卵かけご飯ってサイコーじゃんか」

有り合わせのもので小腹を満たすなんて、本当に夫婦みたいでサイコーじゃんか。
俺らにはこれがぴったりだよ、な?

11/19/2023, 1:54:57 AM

【たくさんの思い出】

君との思い出?
たくさんあることは間違いないよな。
だって子どもの頃からの付き合いだもんなぁ。
思い出ってか、君と過ごした時間が間違いなく今の俺を作ってる。
本当にそう思ってる。
頑固で落ち着きなくて人の言うことなんか聞かない天邪鬼だった俺が、今はまぁまぁ中間管理職的な立場で上からも下からも慕って貰えるのって、君をみてたからだよ。
君はいつだって一生懸命で、自分より他人のことを考えてるだろ?
自分が辛い時だって、仲間の心配をして。
そういう君をみてたら、俺だって少しずつ変わっていったんだ。
君とのたくさんの思い出が、俺を大人にしてくれた。
今の俺を作ってくれたのは君なんだよ。
もしも君が俺のこと少しでも好きだと思ってくれるなら、そろそろ責任とって付き合ってくんない?
ほら、また思い出が増えたね。

11/17/2023, 5:15:27 AM

【はなればなれ】

靴下が片方ない。
乾燥が終わったところで取り出してみると、片方が行方不明。

「おっかしいなぁ」

あちこち探してみても、ない。

「小人が持って行ったかなー、返しておくれー」

そんなことを言いながらソファの下や、部屋の隅を探していたら、さっき帰って行ったばかりの恋人からのLINE。

“ごめん。靴下片っぽカバンに入ってた”

はなればなれの靴下。
ゆうべは一緒だったのにな。
靴下も俺らも。

11/15/2023, 10:37:59 PM

【子猫】

「子猫ちゃん♡」

なんて恋人を呼んだ日には、俺はきっと口をきいてもらえなくなる。
猫嫌いな恋人。
口をきいてもらえないのはイヤだから、「子猫みたい…可愛い…スッゲェ可愛い…」というデレデレしたアホみたいな感想は、あくまでも胸の中で収めている。

今朝も恋人はふわふわしたパジャマ姿(ルームウェアつーの?)で、陽だまりの窓際の椅子にちょこんと座ってコーヒーを飲んでいる。
明るい髪が柔らかな光にきらめいて、ほんとに可愛い。
可愛すぎてたまらない。

“可愛い…子猫みたい…可愛い…”

アホな感想を抱きながら恋人の姿を眺めていると、恋人は「何?」と不審そう。
「あー、今日もいい天気だなって思ってた」
得意の人畜無害な笑顔で誤魔化した俺に、恋人は「なんか、誤魔化してる」とひと睨み。

俺の子猫ちゃんは、本当に可愛い♡

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