【また会いましょう】
サンダル、また会いましょう。
半袖のTシャツ、また会いましょう。
麻のジャケット、また会いましょう。
このサンダルを履いて君と散歩したんだ。
このTシャツを着て君とお昼寝したんだ。
このジャケットを着て君とカフェでランチを食べたんだ。
一つ一つ夏の思い出を仕舞って、次の夏の再会を約束する。
そして、懐かしい冬の思い出とまた出会う。
ブーツ、また会えたね。
ふわふわのセーター、また会えたね。
カシミヤのコート、また会えたね。
このブーツを履いて君とまた歩きたい。
このセーターを着て君とまたおうちでまったりしたい。
このコートを着て君とまた街へ出かけたい。
夏も冬も君といたいんだ。
【スリル】
ギリギリ、スレスレ、紙一重。
君の機嫌が悪くなりそうで、悪くはならない微妙なところ。
基本、構ってほしい俺は君と2人だとベタベタしてイチャイチャしてたい(真顔)。
でも君は真面目だから2人きりだとしても、そんなに甘くはない。
だからこそ俺は「構って構って」と後追いして、君の邪魔をしまくるわけだ。
君が料理を始めればエプロンの裾を引っ張り、君がテレビを見ようとすれば俺はソファに横たわって座れなくするし、君がお風呂に入ろうとした途端に俺も走って浴室に駆け込む。
君は優しいから、そんな俺に呆れながらも「はいはい」と構ってくれる。
でもやり過ぎれば君だって雲行きが怪しくなる。
だから、そうならないように加減しつつ「構って」攻撃を仕掛けるんだ。
こういうのってスリルって言うんだろ?違う?
【意味がないこと】
「りんご」「ゴールキーパー」「パイナップル」「ルイス・スアレス」「…それ何」「知らない?ウルグアイ代表のサッカー選手」「知らねぇよ」「なんでもいいから、ほら、“す”」「すいか」「カフー」「…カフェじゃなくて?」「カフーだよ!ミランで活躍したブラジル代表」「知らないけど…“ふ”なんだな。ふ…フェイジョア」「何それ」「知らないの?」「知らねーよ、そんなの初めて聞いた」「果物だよ」「あ…アトレティコマドリー」「それもサッカー選手?」「違うよ、スペインのサッカークラブ」「り…り、りんご」「それ、さっき言ったぞ」「負けちゃったね」「負けたら罰ゲームだぞぉ」
【あなたとわたし】
「秋を拾ってきたよ」
と、あなたは枕元にどんぐりとまつぼっくりを置いた。
「風邪治ったら一緒に行こうな。それまでゆっくり休めよ」
あなたはそれだけ言って帰って行った。
あなたとわたしみたいなどんぐりとまつぼっくり。
元気になったら一緒に秋を拾いに行こう。
【紅茶の香り】
別に紅茶は悪くない。
紅茶も美味しいよ?
おれは珈琲を片手に、隣に座る恋人の顔を伺う。
おれが心を込めて淹れた珈琲を飲みながら「紅茶もいいよな」なんて、デリカシーのないことを口にするんだから、ホントに君って人は。
ほっぺたを膨らませるおれに、「可愛い」とか言ったって珈琲の機嫌は直らないよ。
おれじゃない、珈琲の機嫌だから。
デートに誘ったって──珈琲の機嫌は直らないけど、おれの機嫌は君との紅茶の香りで直るかも。