鐘の音
「なつくん、これからもずっと一緒にいようね?」
こさめがそう言うとなつくんは優しくほほえんだ。
今日は待ちに待ったこさめたちの最高に幸せな日。
なのになつくんはどこか悲しそう。
笑顔なのに今にも涙が溢れだしそうな顔をしている気がする。
どうしてだろう。
これから先に不安があるのだろうか。
分からない。
でもこれから先、絶対なつくんを幸せにする!
なつくんと一緒に幸せになる!
そう心の中で誓うと同時にウェディングベルを二人で鳴らした。
辺りに鐘の音が響き渡った。
______
頭上でアラームの音鳴っている。
目を開けると見慣れた天井が視界に入る。
「あぁ、夢か、」
毎日のようにみるなつくんとの結婚式の夢。
もう叶えることの出来ないこさめの夢。
「おはよう、なつくん…いってきます」
なつくんの写真を見ながらそう言うとこさめは重い玄関の扉を開いて家を出た。
明日、もし晴れたら
明日、もし晴れたらこさめには会えない
こさめに会えるのは雨の日だけだから
梅雨はあんなにこさめに会えたのに
夏は全然こさめにに会えない
なんてつまらない季節なんだろう
俺は明日こそはと雨を願い続ける
だから、一人でいたい。
誰も俺より長生き出来ない
いずれ俺の目の前から居なくなるのに大切な人をつくりたくない
だから、一人でいたい
ずっと、ずっとそう思ってきたのに大切な人が出来てしまった
あぁ、なんて悲しい幸せだろう
神様が舞い降りてきて、こう言った
ある日突然神様が舞い降りてきた
そして神様はこう言った
「こさめの恋人になってください!」
…は?
え、いやなんで?初対面だよな?
「いや急にそんなこと言われたっていくら神様でも好きでもないやつと付き合うかってんだ」
見た目は可愛いけど男だし、何より俺は今恋する気はねぇからこいつと付き合うとか絶対無し
「じゃぁ、こさめのこと好きにさせちゃいます!」
「絶対無理だな」
「無理じゃないですよ?絶対好きにさせますから!」
そう言って俺に向けてきた笑顔は少しいたずらっぽくて不本意にもドキドキしてしまった
誰かのためになるならば
誰かのためになるならなんて理由で俺は何かをしたりしない
でもはみことちゃんのためになるなら俺はなんだってする
君の笑顔を守りたい
''すちくん!''
笑顔で俺の名前を呼んでくれる君が好き
なんだってするよ?
大好きな君のためならなんだって