湯加減は如何ですか
ーうん ゆずが浮いている
良い香りだしちょうど良い
あら
良かった お隣さんから
ちょうど柚子をもらったのよ
ーそうか、君も後で入るとわかる
良い感じだよ
ええ ありがとうございます
ー風呂から出ると
妻が子供たちの勉強を見ていた
ー良いお湯だった
あら もう出たのね
ーうん どうだい坊ちゃんたち
勉強は難しいだろう
お父さん
ぼく漢字はいいんだけど算数がやだなやっぱ
ぼくもー
ーそうかい
何度も試して分からないときは
わかるところまで戻って勉強し直すんだよ
(はーい)
今日も我が家は暖かいものである
空を見上げる
この大空は
どこまでも
果てしない
空を見上げる人は
どれくらいいるだろう
この目から今見える光景は
自分だけのものだ
玄関に行くとベルの音を鳴らす
白い闇に溶け込むように息を潜める
僕は玄関先から隠れながら空を見上げた
息が白い 寒い
ーシャンシャン聞こえるー
ママ! サンタさん来たー!
ーパパだよ!
違うよサンタだもん!
子供達が気が付いたようだ
凍えてしまう 早く家に入れてもらいたい
ガチャッ
ドアが空き温かな空気がふんわりと
こちらに伝わる
ホウホウホウ!!
プレゼントだよ!
良い子にしていたね!
子供達にプレゼントを渡す
上の子はおままごとのメイクセット
下の子はリカちゃん人形
ーパパ!ありがとうー!!!
サンタじゃん!
ー違うパパだよー
これこれ
お部屋でゆっくりプレゼントは見なさい
メリークリスマス!
ーメリークリスマス!!
子供達はプレゼントに夢中になって
部屋に戻って行った
部屋に戻り着替えると
奥さんが
上の子はもうサンタさん信じてないわ
来年もやるの?風邪ひいちゃうわよ
と困り顔だ
僕は奥さんの額にキスをして
手に紙袋を持たせた
ネックレスだ
あら
私まで?
良いの?
お金…
今日はそう言うな、
僕なりに貯めてたんだ
奥さんを抱きしめた
暖かい日になった
寂しくないよ
こっち見ないで
彼女は静かに俯いて
泣いているようだった
いやだよ
もう
いつも私ばっかり泣いてるじゃん
僕は
言葉をどう返したら良いのか分からなくなっていた
ごめん…
僕は言葉を振り絞った
なんでよ
どうして急に別れるのよ
分かんないよ、、
僕は
彼女の事が信じられない気持ちになっていた
火曜日に会っていた男の人は
君の今の彼氏なんだろう?
僕はもう
必要無いじゃないか
急だけど
うまくいくと良いなって思うよ
今まで ありがとな
そう言うと
僕は荷物を車に乗せて
俯く元カノを見て
さようなら、かわいい人
と
手を振った
僕は今から明日を生きるよ
車を走らせて
とりあえず泊まるホテルまで
僕は涙や鼻水を垂らしながら
運転した
僕はいいんだ
彼女が幸せになれるなら
一緒だったんだ
ぼく ずっと
おとうさんと
ハチは
この冬も一緒に
なれると
おとうさんを
ずっと
待っています。