こねずみのリックは言いました
雨が降ろうが槍が降ろうが
たとえ火の中水の中
嵐が来ようとも
猫に追い回されようとも
僕には使命がある
亡くなった父さんの代わりに
いつかでっかいパンの耳のかけらを
取ってくるんだ!
ここの人間は
パンの耳をよく落としてくれる
だから
誰もが眠りこけた朝方3:00
僕は行かなければならない!
あのテーブルの元へ!
ここの猫はようく僕ら家族を狙うから
気をつけて行くんだ!
あのテーブルの元から
パンの耳のかけらを
取ってくるのは至難の業だ
でも僕は行く
行くんだ!
父さんの名誉のために!
そして弟達と母さんのために!
こねずみのリックはそう言うと
小さな身体をぶるっと震わせて
人や猫の気配を匂いで嗅ぎ分けて
近くに居ないか確認しました
…匂うぞ まだ居る
あの猫め…
こねずみのリックは壁の隙間から
部屋の中の様子を窺います
あの猫…さっきからジッとして動きやしない!
僕らのことを見張ってるのかなぁ
パンの耳があるからいつもより用心深いんだな…
こねずみのリックは眠る事にしました
ひとまず寝るかな
あの猫が離れるまで…
お母さん 明日は冒険に出るから
起こしてね…おやすみ…
おやすみなさいリック
今日もお疲れ様でした
夕方ごろ
子供達のはしゃぐ声や
賑やかな盆踊りの音楽
そしてドンドンカチカチと太鼓の音が
聞こえ始め
窓を少し開けると
暖かな風と
焼肉や焼きそばやイカ焼きの
香ばしい香りが漂ってきた
出かけようかな
と
浴衣に身を包む
サンダルを履いて
玄関を出ると
いよいよ
子供達がはしゃぎ回っているのが見える
屋台でかき氷のイチゴを頼んだ
りんご飴やミニカステラも美味しそう
わたあめや毒々しい色のうずらの雛達
金魚掬いは大盛況であり射的も見物客が多い
怪しい屋台も楽しい屋台も
それぞれ客で賑わう
友達を見つけた
友達は大きなカメラを持っている
パソコンに載せる写真を撮っているんだ
と友達
盆踊りの会場まで来た
みんな笑って賑やかだ
見様見真似で盆踊りに加わる
友達が夢中で写真を撮っていた
と
花火の音だ
ドンッ
盆踊りから離れて
人混みの中を歩き
空を見上げると
花火による大輪の花が咲いていた
ドンッ
わぁ
綺麗だねえ
私が言って振り向くと
友達は写真に夢中だった
彼の覗くファインダーからの世界は
きっと賑やかである
一時間ほどして
私は友達と別れて
家に帰った
家がひどく静かで
尚且つそれにホッとした
今日も一日
楽しくて
余韻は少し寂しかった
また
来年も
楽しみにしよう
日曜日の小さな礼拝堂
いつも日曜日の朝は祈りに来ている
子供達はポストカード付きのお菓子をもらう
今日も静かに私は牧師さんのお話を聞いている
お母さんの隣でうつらうつらとする女の子
何かメモをとっているおばあさん
窓から入るキラキラした朝日
牧師さんの静かな言葉
静かな雰囲気
今のゆっくりした時間が好きで
毎日あくせくしている私は
ここで心のリセットを行う
ホッとする場所である
すぐ前の席から反対を向いて
5歳ぐらいの栗色の髪をした男の子が私を見ている
お姉ちゃん
男の子に話しかけられた
なあに?
私は何気なく返事をする
お姉ちゃんは神様来たことある?
唐突な質問だ
無いよー? 君は?
聞いてみた
僕ね 今ね 神様が来たのー
男の子は普通のことのように言う
神様はなんか言ったりしたの?
私は男の子にヒソヒソと聞いてみる
神様はねー 僕に笑ってねって言ってた
男の子は普通に答える
良かったね
私はニコニコする男の子に微笑む
うん ありがとうお姉ちゃん
男の子は前に向き直る
(笑ってね かぁ いいな
私にもそんな時期あったのかな…)
私はぼうっとする
牧師さんも微笑んでいた
ミスチルのタガタメを聴きながら
俺は自分1人分の夕飯を作る
ゆでだこを一口大のぶつ切りにして
チューブのわさびと醤油
マヨネーズを合わせて
一口大に切ったアボカドと
一緒に混ぜた
ご飯を盛り
ハイボールを冷えたコップに注ぎ
さっと塩茹でした枝豆もある
俺は
平和ってのは
自分で作るもんだと思う
向こうから
やってくるのを待ってたら
俺はジジイになっちまうし
そんなに待つ気はさらさら無い
自分の平和は自分で作って
自分で守るもんだ
そんなこともできねえで
大人なんぞやってられっかよ
俺は自分を鼓舞するが
俺はいつから大人だっけかなって
年齢で言えば大人だけども
頭ん中はガキンチョ同然だ
まだまだ学びが足りんのだろう
飯が冷めるし
まずは食う
話はそれからだ
僕はこの
鳥かごのような
病院に入院して早一年になる
外に出ることは
院内の散歩ぐらいの生活だ
僕は少し頭の育ちが他の人よりも
遅いらしい
だけどお父さんとお母さんは
普通の学校の普通の学級で
僕を通わせて
育ててくれていた
僕はむずかしいことは分からないけど
先生がお父さんとお母さんに何かを言って
僕を鳥かごのような病院に
入れたんだと思う
今は漢字を毎日練習したり
パズルとか折り紙とか塗り絵が好きだ
特にナースのおばさんから
塗り絵を褒めてもらえる
才能があるって
僕は将来
画家になるかもしれないな
才能があるからだ
僕はたまに外に出て
座っているのが好きだ
風とか鳥の声が好きだ
夏は暑いけど
僕は先生に優秀な優等生と言われた
だから僕はそれを今日の日記にも書く
相部屋の子はとてもシャイで
いつも廊下を歩く
たまにテレビを見てる
僕はナースのおばさんに
また完成した塗り絵を見せるんだ
僕は外でいつか生活出来る人になって
病院の人を驚かせたい
そのために僕は今から漢字の練習をする