生粋

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7/6/2025, 11:50:32 AM

【空恋】


空の恋

空から恋

空に恋

空回りの恋



これだ


でもさぁ

恋なんてだいたい空回りだろ


なんて思うのは

俺だけ?


めくるめく空回りの果てに

もう空回る体力も無くなってきた俺は

全然、空回ってませんよ

だけは出来るようになったように思う

7/5/2025, 2:34:18 PM

【波音に耳を澄ませて】


夜の砂浜は静かで

聞こえるのは

波の音と時折つぶやく君の声


まだ知り合って間もない彼女は

明日の朝遠方へ旅立つらしい

きっとこれも何かの巡り合わせ

餞別に1冊の本を渡した

しょぼくれそうになった時

もしかしたら役に立つかもしれないと選んだ

手にした本を少しめくって

「この作者の人、だいぶぶっ飛んでるね」と笑った


名残惜しいけれど彼女の明日は早い

あと数時間後には彼女を乗せた飛行機は飛び立つ

そろそろ送っていこうと車のエンジンをかけると

彼女も「えぇ~」と名残惜しそうではある


まだ帰り道の時間もあるし

足りなかったら

家の近くでギリギリまで付き合うよ

と車を出す


筈だった


次の瞬間

何やら不審な気配

車を降りて確認すると

砂浜にタイヤが少し埋まっている


むぅ

これは慎重に対処せねば

彼女にミッション車の運転は出来るか聞くと

大丈夫との元気な返事に一安心

俺が車を押すからゆっくり動かしてと伝え

車の前に移動する

砂の状態からすると何とかなりそうだ

力の入る体勢をとり彼女に声をかける

せ~のっ!

けたたましいエンジン音と共に

車はバンパーまで埋まった


天を仰ぐ

星が綺麗だ


もう笑うしかないが

そうも言ってられない


試行錯誤を繰り返し

何とか砂浜を脱出する頃には

夜が明けていた

喜びを分かち合う暇もなく

急いで彼女を送る

「何時までなら間に合う?」

「30分後には家を出て空港に向かわないと」

「わ~ぉ」


しんみりお別れに浸る余裕も無く

何とか時間内に送り届けた彼女の後ろ姿は

満身創痍であちこち砂も付いてたけど

朝日を纏ってなんだか逞しく見えた


「きっと大丈夫」

そんな気がした


立ち寄ったコンビニの駐車場で

コーヒーを飲みながら

まぁ

お互いに良い思い出にはなったかもな



彼女を運ぶ飛行機を眺めた後

その駐車場で

5時間くらい寝てたらしく

寝違えた首と筋肉痛に耐えながら帰った

7/4/2025, 1:58:56 PM

【青い風】


残念ながら

それを見た経験はない

それっぽく感じた事はあるかも知れない


茶色い戦争があった頃には

そんな風も吹いてたのかな


風の色なんてものに気を止める事もなく

忙しない日々を過ごしていると

風も色褪せてしまったのかもな


もう少し若かりし頃なら

それなら俺が色付ける

なんて小っ恥ずかしい事を言ったり

そもそも風に色なんてと

方意地張ってみたりしたのかなぁ


今でも無いわけじゃないけれど

たま~に吹く風が心地良いから

色は無くてもいいや

7/3/2025, 1:17:26 PM

【遠くへ行きたい】


たまに考える事もある

全てをリセットし

新しく最初から積み上げてみる

そんな妄想

あくまで妄想


今いる場所も残念ながら

そんなに易々と手放せるような所ではない

手放したい現実もあれば

手放すにはあまりに惜しい現実もある


だから

たま~に少しだけ遠く

少しだけ普段と違う景色を眺めに行ければ

それでいい

それが手離したくない現実達と共になら

最高じゃないか

7/2/2025, 11:12:45 PM

【クリスタル】


火、水、風、土

今は違うのかなぁ



フーファイターズじゃないよ


さてさて

いやいや

クリスタル

クリスタルねぇ




子供の頃

大小さまざまなクリスタルを30個くらい持ってた

詳細は覚えてないけど

遊んでる途中で見つけた宝物達

どれも綺麗にカットされ

キラキラと太陽の光を乱反射


お土産に貰ったせんべいの空き箱に入れ

引き出しの奥に仕舞われたそれを取り出し

ニヤニヤと眺める日課を繰り返すうち

ふと衝撃が走る

もしかするとコレ

俺にとてつもない富をもたらすんじゃ.......


テレビで見た芸能人は

俺の宝石よりも

ずいぶん小さな宝石を見せながら

聞いた事もないような金額を口にしていた

しかし

どこに持っていけば買ってくれるのか分からず

宝物を手放してしまうのも惜しい気もする


そこで

せんべい箱の中から

一番小さなのを取り出し

親の目に触れる所に置いてみた

それでもテレビで見た宝石よりも数倍は大きい


大人なら適切に処理してくれるだろうし

天からの贈り物に

親もさぞかし喜ぶだろう

きっと明日からは生活が激変すると

眠れぬ夜を過ごし

迎えた翌日

天からの贈り物はゴミ箱の中にあった


俺とは違い

宝石に精通してない親には

その価値が分からなかったようだ

ゴミ箱の宝石を拾い上げ

せんべい箱に戻しながら

自分が大人になる日を待つしかないと

自身に言い聞かせた


このお題が出るまで完全に忘れてた

今や何処にあるのかも分からない

シャンデリアのガラス達

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