【何でもないフリ】
多分
それ得意
本当は苦手
だけど
ついつい見栄張っちゃう
今も色々とピンチの連続だけど
多分
バレてない
記憶力も良くないから
何でもないフリしてたら
そのうち忘れてる
そしてまた怒られる
【仲間】
思えば
やはり恵まれてる
少々キッツイ環境になったとしても
一定の理解は得られてる気がする
なんだかんだと
気にかけて貰ってる
もちろん努力もあるが
全ての努力が報われるとも限らない
長い事
心底塞ぎ込まずにすんでる
忘れてるだけかなぁ
【手を繋いで】
こっちこっち
ゆっくりゆっくり
気をつけて
気付けば子供らも
それなりに立派な大人
こちらの助けなんか無くても
スタスタと歩いている
きっと
次に手を繋ぐのは
こちらが助けてもらう方だ
子供の頃にかけた言葉を
今度は聞きながら
なんて思うと
老いていくのも悪くはない気がする
だけどもしかしたら
繋いでもらえないかもしれないから
少し鍛えておこう
【ありがとう、ごめんね】
あぁ
フラれる時のやつだ
もしくは
気持ちはありがたいけど.......
そんな時に繰り出される
優しいお断り
そのテイストで考えるのは
ちとキツイので
こじつけてみる
ありがとう
心配かけてごめんね
ありがとう
こっちこそごめんね
ありがとう
遅くなってごめんね
ありがとう
付き合わせてごめんね
ありがとう
いつも無理言ってごめんね
ありがとう
こんな事しか出来なくてごめんね
ありがとう
ちゃんと言えなくてごめんね
ありがとう
甘えてばかりでごめんね
なんだ
案外いける
確かに最近も
ありがとう、ごめんね
その理想的な形を見て感動したんだった
フラれる時の
ありがとう、ごめんねも
気持ちはありがたいけどの
ありがとう、ごめんねも
ごめんね
の方に
捕らわれすぎなのかもしれない
ありがとうにも
ごめんねにも
相手への想いが含まれてるに違いない
ありがとう
ごめんね
どちらもちゃんと使える人になろうと
今さらながらに思う
もういい大人
【部屋の片隅で】
1枚の小さな写真が揺れる
もう少し若い頃の俺だ
今より少し痩せている
家族好きの長女が
中学校の修学旅行の準備をしていた
やはり楽しみなようだが
家族と離れる事が少し寂しそうだった
加齢臭の染み付いた俺の枕を
持ってく?
とボケたつもりだったが
本気で悩み出したのを覚えてる
必要な物を買い足しながら準備をしていると
長女が新しいデジカメを買って欲しいと言い出した
まぁ確かに
子供達の成長を撮り続けた
我が家のデジカメは買い替え時でもあった
出発の日
大きな荷物と
新しいデジカメを携えた長女を
学校に送って行きながら
昨夜作ったお守りを渡した
本当に困った時に開けなさい
マンガなんかで見た事あるシーンだ
きっと小遣いが無くなった頃に開けるだろうと
その時は軽い気持ちで・・・
その夜
長女から泣きながら連絡があった
どうやら
買ったばかりのデジカメを
友達が誤って踏んでしまったらしい
わがまま言って買って貰ったデジカメが
活躍する間もなく寿命を終えた事実に
長女は底知れぬショックを受けたらしく
担任の先生に
持ってきたお小遣いで修理するから
電気屋さんに連れてってくれと号泣しながら言ったらしい
とにかく今日は
営業時間も過ぎてるから
と先生に嗜められ
ようやく部屋に戻ったとの事だった
部屋に戻った長女は
思い出してしまったらしい
今朝渡された
まさかホントのピンチに開けられるとは思ってなかった
お守りの存在
友人達の助けか
電話で伝えた思いが伝わったのか
翌朝には気を取り直した長女は
修学旅行をしっかり楽しみ
無事に帰って来た
学校に迎えに行くと
到着したバスから降りてくる生徒達が
やたらと俺に挨拶をしてくれる
あ!〇〇のお父さん!こんにちは!
中にはほぼ初めましての子も居た
何故か急に認知されていた
帰ってきた長女に話を聞くと
あの夜
一人部屋に戻った長女は
泣きながら荷物の中からお守りを取り出したらしい
幾重にも包まれ
その1枚1枚に
今なのか?
本当に今なのか?
などと書かれたお守りを迷う事なく開いた
出て来たのは
軽く微笑み
親指を立て
ポーズを決め
ど~んマイ!
と書かれた俺の写真
そこに心配して部屋にやって来た
長女の友人ユウナ
お守りセットを見たユウナは
お前のと~ちゃんオモロ!と
泣くほど笑い
そしてお守りは
同級生達の中で一周回って戻ってきたそうだ
あぁ
それで皆・・・
そ~ゆ~事は先に言ってくれよ!
そうと知ってたら
車の中で待ってたよ!
あぁ恥ずかしい
すっごい大人ぶって挨拶返しちゃったよ
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか
部屋の片隅に飾られた
小さな写真は
ど~んマイ!
と
こちらに向かって微笑んでいるのだ