【病室】
幸いな事に
あまり縁が無かったが
数年前にとうとうお世話になる事となった
立て続けに・・・
症状が治まると
普段の生活とは違う空間に
発見も多い
歳も症状も価値観も違う同居人達
漏れ聞こえてくる話も
普段聞く話とは違って新鮮だ
ワガママな人もいる
出来の悪い生徒達の面倒を見る
先生(看護師さん)達
軽口叩いたり
ダメって言われた事やったり
無理な注文言ったり
こうしてくれるのが当然
なんて事まで言ったりする
夜中に何度もナースコールを押し
背中痒いと言ったり
喉乾いたと言ったり
セクハラ紛いな事言ったり
いやありゃ完全なセクハラか
看護師さん達はサービス業ではない
相手はお客さんではなく
患者さんだ
仮にサービス業だったとしても
如何とは思うが
それでもナースコールの度にやって来て
セクハラは軽くあしらい
優しく声を掛け
可能な限り対応し
寄り添い(身体的な事ではなくて)
有事の際にはすぐに駆け付け
大丈夫?と声を掛けながら懸命に処置をしてくれる
実際彼等の本業はそこのはずだ
ましてや
当時はコロナで大変な時期でもあった
ベッドの上から見れるのは
膨大な仕事のほんの一部だろう
それでも凄い人達だと思った
実際
自分の仕事を考えても
管轄外の事は基本やらない
当たり前のように求められれば尚更だ
自分の仕事ぶりを少し恥じた
絶食治療はつらかったけど
凄くいい経験をさせてもらった
治療してもらったのは
身体だけでは無かったかも知れない
【明日、もし晴れたら】
今日より少しだけ頑張ってみよう
今日より少しだけ楽しい事も考えよう
今日より少しだけいい日にしよう
【だから、一人でいたい】
わりといい歳である
大人げないだけで
結構なお年頃だ
そして大人げなく人見知りであり
人依存だと思う
一人での行動力は
あまり無い
一人だと楽しい事もあまり思い付かない
だけど
誰でもいい訳でもない
大抵は大丈夫だけど
大丈夫とこの人がいいは違う
楽しいが湧いてくるし
気を使わなくていい
カッコつける事も
見栄を張る事もしなくていい
不要に言葉選びする事も
知識をひけらかす事も
何も気にせず自分で居ていい
それを知ってしまった
だから今は・・・
【澄んだ瞳】
高校の時か
美術の授業で
有名な肖像画を模写する事があった
割と目にする事のある
よく知ってる絵だ
今まで特に気に留めた事はなかった
好みの絵でも無かったのだろう
授業が始まり
先ずは目から書こうと思い
その絵を見つめた時だ
吸い込まれるような瞳に驚愕した
艶やかで透明感があり
とても真似出来るような気がしない
この瞳を模写しようとするだけで
授業の時間は使い果たしてしまう
全体を見れば
そんなリアルな絵ではなさそうなのに
それとも瞳の模写を終え
次に移った時にまた腰を抜かすのか
よく知ってるつもりだった絵
何も知っていなかった
違う人が見たら
また違う印象を受けるんだろう
全て見透かすような
澄んだ瞳に
自分の目から
音を立ててウロコが落ちていったのをよく覚えている
あれから
長い時間が経ったけど
俺の目は再び音を立てる事になった
君の瞳を見たから
【嵐が来ようとも】
大地を掴み
目標を見据え
後続を守り
歩を進め
時折笑顔で振り返る
そんな体力はもうない
気力はある
しかしこの気力も
迷惑な話だろう
先頭には立たず
後ろを口出しせずについて行く
そんな順番が来たのだ
頼もしくなった背中を眺めながら
取り残されぬように