3/13/2025, 3:28:34 PM
彼が絵を描く姿を、横で見るのが好き。
絵筆は踊るように舞い、自由にステップを踏んでいく。ひとつずつ色がついていく様は、まるで帆布に足跡を残すみたい。
帆布が色づいて鮮やかになる度、筆洗バケツの水にもたくさんの色が広がった。
最初は透明だったけど、今はもう真っ黒だ。
描かれた絵に黒は使われていないのに、不思議。どうしてそうなるか、聞けば答えてくれると思う。でも、私は聞かないことにした。彼が自分の世界を色に乗せるとき、とても楽しそうに笑うから。その透徹した表情は、紛れもなく透明だと思う。
3/12/2025, 10:35:30 AM
「じゃあ、また明日」
空が茜色に染まる頃、通学路の分かれ道で親友に言った。
「うん。またね」
親友は屈託のない笑顔を浮かべている。夕日が照らすせいか、いつもよりも眩しい。
咄嗟に反らした視線の先には、長く延びる黒い影。己の内なる心を映すような、欲に塗りつぶされた色だと思った。
親友に向く特別な感情を、今日も伝えられなかった。言ってしまったら、二人の関係が終わってしまうようで。
僕たちは友達同士のまま、今日を終えた。
鳥がさえずる朝、空には爽快な青が広がっている。
「おはよう」
いつもの通学路で、親友に声をかけた。こうしてまた、友達同士の一日が始まる。
3/11/2025, 3:17:22 PM
夜道を歩いていると、君が空を指差した。
ねぇ、あれを見て。と言うが、空には無数の星が輝いていて、どれを見るべきか悩んだ。とりあえず適当な相槌として「うん」と返す。
綺麗だよね、と笑う君を見ながら、また「うん」と返す。僕の視線にも気づかず、無邪気に笑う横顔。
僕にとっては、君が一番綺麗に輝く一等星。