出掛けてから帰った後、鏡の中の自分の姿をじっと見るのがいつからか癖になってしまっている。
妖怪サトリの血を引く俺には周囲の人間の頭の中がわかる。この能力、ハッキリ言って最悪だ。
オンオフができないから常に頭の中に誰かの声が聞こえてくる。成長とともにだいぶ力が弱まったとはいえ──人混みに行った後はしばらく頭の中がグチャグチャして、自分が誰なのかさえ怪しくなる。
だから、鏡の中の自分を見つめて言い聞かせる必要がある。
俺は俺だ。
彩樫高等学校2年生。問間覚だ。
出演:「サトルクエスチョン」より 問間覚(トイマ サトル)
20241103.NO.92.「鏡の中の自分」
(下書きとして一時保存)
20241102.NO.91「眠りにつく前に」
魔法は一時的なもの。
どんなに魔力を込めても、どんなに高等な魔法陣でも、その効果はいつか消える。
……ならば、永遠の魔法を作ろうじゃないか。
目には見えずとも確かにそこにいる友たちの王──精霊王と契約しよう。
精霊王との契約だ、いくら莫大と言えど僕ひとりの魔力では足りぬだろう。ならば街ひとつをくれてやる。
僕と街の魔力を贄に、永遠の魔法を手に入れる。
2度と人々が争わぬような。
永遠の平和が続く魔法を、作ってみせよう。
出演:「ライラプス王国記」より 初代魔王
20241101.NO.90「永遠に」
どうすればいい、どうすれば争いのない理想郷を作ることができる。
周辺の魔獣はあらかた討伐した。もう大型の魔獣がいつ村を踏み潰すかと怯えることはない。もう小型の魔獣がいつ群れてやってくるかと警戒することはない。
人々は手を取り合い、笑顔で豊かな生活ができるはずだ。
そう思っていたのに、なぜ。
魔獣の脅威が去り、代わりに人々の小競り合いが増えた。僕から見れば実にくだらない、どちらが悪いとも言い切れない、どちらも悪いと言えるような、実に些細な幼子の喧嘩のような言い争いだ。
だがその数は徐々に増え、ついには死人が出ることも珍しくなくなった。
おかしい、安全に暮らせるようになったのに。
どうして争いがなくならぬ。
…………そうか。「敵」がいればいいのか。
共通の敵がいないから、皆違う相手を敵と見なして争ってしまう。だから小競り合いが増えるのだ。
そうか、そうか。
ならば僕が「敵」を作ろう。
生き残った魔獣の身体を切り取って。
僕の教えに従わぬ近隣諸国の者の身体に貼り付けて。
魔獣と人間の掛け合わせ──きっと「魔人」と呼ぶのが相応しかろう。
ならば僕は魔人を作った者、魔人の王──さしずめ「魔王」というとこか。
出演:「ライラプス王国記」より 初代魔王
20241031.NO.89「理想郷」
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もうひとつの物語、だと?
ふん、笑わせてくれる。
まるでお前たちの物語と僕の物語がまったくの別物みたいな言い草じゃないか。この時代の戦いと1000年前の戦いがまったくの無関係みたいな言い方じゃないか。
否、歴史はそう簡単に断絶しないぞ、愚か者どもよ。
僕は1000年前の戦をもう2度と起こさぬように動いている。それがどうだ、貴様らときたら。この崇高な考えを理解せず民に自由意思を与えるだと。
愚か、実に愚か!
あの戦いを知らぬからそのような妄言が浮かぶのだ。
あの悲劇を知らぬからそのような戯言を吐けるのだ。
大義を理解せず目先のちっぽけな自由に捕らわれるなど愚の骨頂。
──1000年前のくだらぬ争いを繰り返さぬために。
いま一度戦争をしそうではないか、愚かな人間ども。
出演:「ライラプス王国記」より 初代魔王
20241029.NO.88「もうひとつの物語」