「作戦はこう。おれが正面から突入して派手に相手を殺る。きみはその間にどっかからこっそり入って人質を逃す。これでいいかい?」
「雑な作戦だな。っつーか……囮になるなら俺の方がいいンじゃねェか。オマエ魔法使えねェだろ」
その台詞にアルコルの目が光る。月明かりだけの路地裏で、その光は刃みたいに鋭かった。
真っ青な、逆さまの三日月みたいな、鋭い刃。
「あはぁ。この国の例に漏れず、きみも魔法至上主義かぁ。魔法は便利ではあるが万能ではない、だろ? 狭くて暗い室内じゃあ、相手を視認して魔法陣を作って撃つより直接殴る方がずっと早い」
「だが……」
「ま、見てなよ。魔法なんて使えなくても強い奴は強い。お兄さんがそれを教えてあげるよ」
出演:「ライラプス王国記」より アルコル、イル
20241028.NO.87「暗がりの中で」
「ルイン。なにしてるの?」
「これはこれは魔王サマ。紅茶を淹れているところです。よかったら一杯どうぞ。茶菓子もありますよ」
「……紅茶とかお茶ってさー。何がいいのか全然わかんないや。水でよくない?」
「さすが魔王サマ、風情がない、いや実に実利的で現実的な思考でいらっしゃる。そんな貴方は水をどうぞ」
「常々思ってるけど、ルイテン、きみは誰と話しているのかわかってるのかい?」
「我々魔人の頂点にして守るべき存在にして紅茶の良さもわからないお子ちゃま、ってとこですね」
「きみねぇ……」
「では今から紅茶の魅力でもお伝えしましょうか。こちらはアッサムとキャンディのブレンドです。ミルクティーにピッタリでこのクッキーとの相性もよく……」
☆-☆- -☆-☆☆
「ねぇイルさん、紅茶ないの?」
「ア? 水でいいだろ」
「わー出た、これだからきみってヤツは! まったくルインを見習ってほしいもんだ! こんなザックリしたバターたっぷりのクッキーを水で食べろって!?」
「うるせェ俺はお前の執事じゃねェ。紅茶が飲みてェなら自分で茶葉買って淹れてこい」
「ちぇっ、ケチ。あーあ、紅茶の香りが懐かしいや……」
出演:「ライラプス王国記」より ロキ、ルイテン、イル
20241027.NO.86「紅茶の香り」
(下書きとして一時保存)
20241022.NO.85「衣替え」
(下書きとして一時保存)
20241019.NO.84「すれ違い」
窓を開ける。
洗濯機を回す。
布団を干す。
シーツを洗う。
洗濯物を干す。
掃除機をかける。
少しだけ綺麗になった部屋でお湯を沸かしティーバックを見繕う。
どこかで運動会でもしているのだろうか、風と一緒に流れ込む歓声が心地よい。
ベランダに並ぶ洗濯物を眺めながら紅茶を飲む。アールグレイの香りが口から鼻の中に広がり吹き抜ける。
うん、こんな休日も悪くない。
20241018.NO.83「秋晴れ」