─ありがとう、ごめんね─
貴方は言った、『ありがとう』と。
私は言った、『ごめんね』と。
この2つの言葉は、
使い過ぎる程、本来の意味が薄れる。
たとえ本心で言ったとしても。
周りからは『思ってない』と決めつけられ、
自分の言ってる意味が分からなくなる。
それを痛感している貴方だから、
私の気持ちを分かってくれる。
それを痛感している私だから、
貴方の気持ちが分かってしまう。
だから今、こんな言葉が出てくるの。
分かってくれて『ありがとう』って。
今まで気づけなくて『ごめんね』って。
これは決して嘘じゃない。
この2つの言葉は、私達の本心だから。
─逆さま─
私を置いて行く夏。大合唱する蝉の声。
空に比べて濃い海。風で揺れる向日葵。
眩しく感じる太陽。大きく白い積乱雲。
そして目の前で明るく照らされる踏切。
黒と黄、そして今明るく光始めた赤色。
蝉の声も太陽の暑さも、どうでもいい。
これで私の最後の夏は、終わり。
綺麗な夏に、さよならを。
─夢と現実─
子供の頃は「夢を見ろ」って言われてさ、
高校生ぐらいになったら「現実を見ろ」って怒鳴られる。
大人になった頃には夢は捨てちゃって、
考えてもなかった職に就いた。
自分の意思を貫いて、夢を叶えた人なんてあまり居ない。
分かっていても夢を大事にしたいのは、
人間の性なのかもね。
─さよならは言わないで─
『今まで迷惑掛けてごめんね、さよなら』
深夜一時に親友からきたLINE。
その文面には悲しさや苦しさが染み付いていて。
いつかくるとは分かっていたが、
まさかこんなにも早いとは。
できれば、老衰とかがよかったな。
まだ、人生の半分も生きていないのに。
でも止める気はない。
これから辛いかもしれない、苦しいかもしれない。
何も分からないのに死を先延ばしさせるなんて、
身勝手にも程がある。
私も本当は死んでほしくなんかない。
むしろ生きて、一緒に笑っていたい。
でもそれは出来なかった。
何故なら私も同じ気持ちになったことがあるから。
私は『そっか。今までありがとう、ばいばい。』と打ち、
頬に一粒の雫を残して眠りについた。
─距離─
いつからだろう。
貴方と距離が出来てしまったのは。
同じ教室に居るはずなのに、
まるで透明な壁があるように感じたのは。
廊下ですれ違っても、
声を掛けてくれなくなったのは。
分かってる。分かってるつもりだよ。
そりゃ新しい関係も増えるし、
元からの関係を疎かにすることはあると思う。
でもさ、貴方は違う。
関係を最初からなかったことにしてるみたい。
私にはそう見えるよ。
ねぇ、もう私は貴方の中に存在してないの?
貴方にとって私って他人なの?
昔の貴方は、もう居ないの?