─冬のはじまり─
「うわっ…寒っ!」
外に出ると、吐いた息が白くなる程寒かった。
手袋とか持ってくるべきだったなぁ…。
『あっ!やっと来た!』
『お前遅いよ、こっちはめっちゃ寒いのにさ!』
「いや~ごめんよ?朝布団から出られなくて…」
『確かに分かるけど…!』
そんなくだらない会話だけでも、心がほっとする。
嗚呼、また1日がはじまるんだな、って。
『…おーい。聞いてる?』
「…え?何が?」
『だーかーら!一緒に返ろうぜって話!』
「あぁ、それね」
『それねじゃねぇよ、お前聞いてなかっただろ!』
そんな会話も今年で終わり。
こいつと過ごす、最後の冬。
でもまだ冬は、はじまったばかり。
─終わらせないで─
お願いだから、終わらせないで。
貴方の冷たくて、悲しい言葉で。
私の心を、一番傷つける言葉で。
せめて言うなら、私からがいい。
私の悪いところを直すとか、
貴方を引き留めたりしないから。
だから、お願い。
二人の最後くらい、別れの時くらい。
私のお願いを聞いて?
私の言葉で、後悔のないような終わり方にさせて。
─微熱─
朝起きると、なんとなく体が怠く感じた。
動くことは出来るが、万全という訳ではない。
使わない棚の上にあった救急箱。
そこから体温計を取り出す。
熱を計ってみると、37.2度と微熱だった。
今日は休日。何も予定は入っていない。
…休日くらい、ゆっくりしてもいっか。
私は布団に潜り、また眠ろうとした。
窓からさす太陽が、ほんのり暖かい。
近くにある大通りのいちょうが、
太陽に負けじと輝いているにも気がついた。
ほら、秋はすぐそこ。
ただの休日でも、秋は見つかる。
─太陽の下で─
近所にある、人が居ない公園。
意外と広くて、少し大きな道がある。
遊具もブランコと滑り台があるが、
子供が来た所を見たことは一度もない。
でもそんな公園が、大好きだった。
春は桜の雨が降る公園に。
夏は蝉の声が響く公園に。
秋は紅葉の綺麗な公園に。
冬は白いっぱいの公園に。
まるで人間の表情のようで、綺麗なんだ。
本を読んだり、歌を歌ったり、写真を撮ったり。
全てが綺麗で、楽しいけれど、一番好きなのは秋。
暖かい太陽の下で、ゆったりと本を読む。
ふと落ちてきた枯れ葉に目を奪われたりして。
そんな秋の公園が、僕は好き。
─落ちていく─
私は今、落ちている。
まるで海みたいに蒼い空のような。
まるで桜が浮いている川のような。
そんな綺麗な景色へと、私はゆっくり落ちていく。
いつもは上にいる鳥達も、今は私が上に居るようで。
今までなかった自由すら、今は私の羽になっている。
耐えられなかった世界すら、今はこんなにも美しい。
花のなかった生活も、やっと自由になってゆく。
息苦しかった生活も、やっと幸せになってゆく。
さぁ、もう少し。怖がる必要なんてない。
ただ目を瞑って、落ちるだけ。
お久しぶりの作者です。
ハート1500いきました!ありがとうございます!
ここまで来たら小説家の夢を持ってもいいでしょうかね…?
これからはハート500ごとに報告させていただきます。
これからもよろしくお願いします!
以上、作者でした。