人さがし

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12/3/2023, 8:30:45 PM

─さよならは言わないで─

『今まで迷惑掛けてごめんね、さよなら』

深夜一時に親友からきたLINE。

その文面には悲しさや苦しさが染み付いていて。

いつかくるとは分かっていたが、

まさかこんなにも早いとは。

できれば、老衰とかがよかったな。

まだ、人生の半分も生きていないのに。

でも止める気はない。

これから辛いかもしれない、苦しいかもしれない。

何も分からないのに死を先延ばしさせるなんて、

身勝手にも程がある。

私も本当は死んでほしくなんかない。

むしろ生きて、一緒に笑っていたい。

でもそれは出来なかった。

何故なら私も同じ気持ちになったことがあるから。

私は『そっか。今までありがとう、ばいばい。』と打ち、

頬に一粒の雫を残して眠りについた。

12/1/2023, 3:05:01 PM

─距離─

いつからだろう。

貴方と距離が出来てしまったのは。

同じ教室に居るはずなのに、

まるで透明な壁があるように感じたのは。

廊下ですれ違っても、

声を掛けてくれなくなったのは。

分かってる。分かってるつもりだよ。

そりゃ新しい関係も増えるし、

元からの関係を疎かにすることはあると思う。

でもさ、貴方は違う。

関係を最初からなかったことにしてるみたい。

私にはそう見えるよ。

ねぇ、もう私は貴方の中に存在してないの?

貴方にとって私って他人なの?


昔の貴方は、もう居ないの?

11/29/2023, 10:22:52 PM

─冬のはじまり─

「うわっ…寒っ!」

外に出ると、吐いた息が白くなる程寒かった。

手袋とか持ってくるべきだったなぁ…。

『あっ!やっと来た!』

『お前遅いよ、こっちはめっちゃ寒いのにさ!』

「いや~ごめんよ?朝布団から出られなくて…」

『確かに分かるけど…!』

そんなくだらない会話だけでも、心がほっとする。

嗚呼、また1日がはじまるんだな、って。

『…おーい。聞いてる?』

「…え?何が?」

『だーかーら!一緒に返ろうぜって話!』

「あぁ、それね」

『それねじゃねぇよ、お前聞いてなかっただろ!』

そんな会話も今年で終わり。

こいつと過ごす、最後の冬。

でもまだ冬は、はじまったばかり。

11/28/2023, 11:51:09 AM

─終わらせないで─

お願いだから、終わらせないで。

貴方の冷たくて、悲しい言葉で。

私の心を、一番傷つける言葉で。

せめて言うなら、私からがいい。

私の悪いところを直すとか、

貴方を引き留めたりしないから。

だから、お願い。

二人の最後くらい、別れの時くらい。

私のお願いを聞いて?

私の言葉で、後悔のないような終わり方にさせて。

11/26/2023, 10:11:00 PM

─微熱─

朝起きると、なんとなく体が怠く感じた。

動くことは出来るが、万全という訳ではない。

使わない棚の上にあった救急箱。

そこから体温計を取り出す。

熱を計ってみると、37.2度と微熱だった。

今日は休日。何も予定は入っていない。

…休日くらい、ゆっくりしてもいっか。

私は布団に潜り、また眠ろうとした。

窓からさす太陽が、ほんのり暖かい。

近くにある大通りのいちょうが、

太陽に負けじと輝いているにも気がついた。

ほら、秋はすぐそこ。

ただの休日でも、秋は見つかる。

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