いつかテレビで、ハイパーレスキュー隊員さんの奥さんが言っていた。ご主人の配属が決まった時、隊長さんから、「どんなにケンカしても、出勤時は笑顔で送り出して下さい。一度出勤したら、もう戻ってこないかもしれないから。」と言われた、と。
それを見て考えた。命懸けで人を助けている人たちに比べたら、何万倍も低いリスクかもしれないけれど、誰だって、いつ、何があるかなんて、わからない。いつ、突然の別れがやってくるかもわからない。
だから、何があっても、寝る前とでかける前や送り出す時は、笑顔で、機嫌良くいようと決めた。いざというときに、後悔しないために。
穏やかな毎日が続きますようにと、そんな願いを込めて、今夜も言う。「お休みなさい。また明日ね。」
透明なもの
水、空気
それなしでは生きられないのに
ついついありがたさを忘れる
透明な音
オルゴール
心が静まりかえっていくような
そんな音
朝、スッキリ目が覚める。
軽くストレッチと瞑想をして、穏やかに家事をする。布団あげ、洗濯、朝ごはんのしたく、お弁当作り。使ったものはすぐに片付け、家の中はスッキリしている。
気持ち良く夫と子どもたちを送り出す。
お皿を洗い、家のなかを片付け、余裕をもって早めに出勤する。
みんなに挨拶をし、情報を整理し、スッキリした頭で勤務をスタートする。いつも穏やかで、冷静で、客観的に物事をみることができる。トラブルがあったら、前向きな改善策を考え、スムーズに行動にうつす。人の話をよく聴き、ニーズに応じて柔軟に動く。勤務時間は仕事を頑張るけど、終わったら家族との時間と自己研鑽の時間を大切にする。毎日少しずつでも勉強を続ける。ピアノを弾く時間をつくる。夫や子供と話をし、話を聴き、感謝の気持ちを伝える。夕食後は皿を洗い、片付けをし、子供と一緒に布団に入り、幸せな気持ちでぐっすり眠る。
あれ?「理想の私」だと思って書いたら、テーマ「理想のあなた」だった?
理想のあなたは、こんな私の側で笑っていてくれる人。お互いを尊重し、リスペクトしながら、生きていける人。
私が引きこもっていた中学時代のこと。
誰にも会いたくなくて、たくさんの関わりを断ってしまっていたけれど、一人だけ、会える人がいた。1年上の部活の先輩。私にとってお姉さん的な存在だった。引きこもっていた私に、普通に会いに来て、そして普通に接してくれた。当時の私にとって、唯一の、人との、社会との、つながりだった。
ある日突然、先輩から電話。
「部活来てよ。来月から、親の転勤で遠くに引っ越すことになった。だから、あと少しだけでも、一緒に部活やろうよ。」
目の前が真っ暗になった。先輩がいなくなったら、私、どうやって生きていけば良いんだろう…。と。考えて、考えて、出した結論。
「今なら先輩がいる。今、外に出ないまま、先輩がいなくなったら、私は一生外に出られないかもしれない。」
いきなり学校はハードルが高かったから、まずは家から出て、先輩のうちに行った。それから、朝、先輩の家に寄らせてもらって、そこから一緒に学校に行った。
先輩は予定通り引っ越していってしまったけれど、先輩のおかげで、私は社会とつながり続けることができた。
先輩は、今も遠くにいるけれど、今でも私の恩人だし、大切な存在。
「恋は魔法、愛は思いやりと歩み寄り」だって、誰かが言ってたな。
そう、恋は魔法。ある日突然降ってくる。自分ではコントロールできない。そして、魔法はいつかとける。降ってきた時と同じように、ある日突然。
愛は歩み寄りと思いやり。自分の意志で、一歩一歩紡ぐもの。
恋の魔法をとかないたったひとつの方法は、魔法がかかっている間に、歩み寄り、思いやり、自分の意志で愛に変換していくこと。