「踊るように」
踊るように生きること
この指先まで
この長い髪の先までも
自分の意志で
心の中に溢れる音楽に乗せて
思うままにうごかすこと
誰にも邪魔されずに
誰にも咎められずに
誰の指図も受けずに
わたしだけの音楽をもち続けること
もう踊らされるのは
まっぴらなのよ
「踊るように」
「不完全な僕」
あなたには きっとすぐに
もっといい人が現れるでしょう?
目を丸くして
信じられないという表情で
君は言うんだね
そのことばに その表情に
心を引き裂かれるおもいだというのに
君でなければ
不完全な僕だというのに
「目が覚めると」
ワクワクしたような
切なくなったような
胸が熱くなったような
胃が痛くなったような
わけもわからず涙を流したり
抑えの効かない苛立ちに任せて
あなたを詰ったり
あなたを傷つけたり
あなたを突っぱねたり
悲しそうな表情に気づかないふりをしたり
そうかといって 急に甘えたり
聖母マリアのように
あなたの心が手に取るようにわかったり
多重人格のようにスイッチがかわる
「今日はどの貴女?」と言われる
そんな私が夢の中なのだとしたら
目が覚めると
スンとおとなになるのなら、
あなたに「一体どうしたの?」と
言われるくらいなら
「寂しいとさえ思うんだけど?」と
言わせるくらいなら
私はずっと
目が覚めなくとも良い
「街の灯り」
丘の上の公園から見下ろす街は
あなたと二人で見るならば
一つ一つの灯りに
物語があるやもしれぬと想い
ひととひとの語らいまでも聞こえたものを。
独りで見下ろす街の灯りの
なんと冷え切って
なんと哀しいものだろうか。
そして私は血を流す。
「好き嫌い」
好き も 嫌い も
あなたと私の間に
同じだけの距離があるということ
愛してる も 憎んでる も
あなたと私の間に
同じだけの距離があるということ
みぎか ひだりか
それだけのこと
好きの反対は嫌いじゃなくて
嫌いの反対も好きじゃなくて
あなたと私の間に
なんの道もない
なんの距離もない
「好き」の反対は「嫌い」ではなく
「嫌い」の反対は「好き」ではなく
それは 無関心
恐ろしくも哀しい 無関心
宇宙ですら距離があるというのに
二人の間になにもないもの
それは 無関心
だから「好きでも」「嫌いでも」
どちらも愛おしい
どちらも愛すべき
どちらもホッとする
つまりは どちらでもいいもの
「好き嫌い」