「柔らかい雨」
片方の靴が側溝から見つかり
傘立ての傘が折られ
たった一人の友が遠ざかり
野良猫から威嚇され
どういう顔で家のドアをくぐればよいのか
途方に暮れる
ああ どうか 雨よ
あなたさえ優しくあってくれたなら
あなたさえ私の頬の涙をかくして
あなたさえ柔らかく髪を撫で下ろし
私が真っ直ぐに前を向く
その道しるべとなってくれたなら
あなたがそうあってくれるのなら
私は顔を上げて歩けるだろう
「柔らかい雨」
「ひとすじの光」
些細なことから
喧嘩みたいになって
お互いに無口になったまま
別れた夜
自分の言葉があなたを刺して
あなたの心が血を流している
そんなときは
傷口に優しく触れたいのに
魔法を使ってでも癒やしたいのに
なんと言ったらいいかわからず
スマホケースを開いては 閉じる
バッグの中は まるで
私のこころのように暗く
物を探すのにも手探り
あなたの姿を探すにも
真っ暗で泣きそうになる
そんな時、突然漏れる
あなたからの着信を告げるスマホの光
それが私にとって
どれほど嬉しいか
そのひとすじの光が
私をどれだけ照らしてくれるか
嬉しい
そのこころをそのまま
飾らず 気取らず
素直にあなたに伝えよう。
「ひとすじの光」
「哀愁をそそる」
丹念に丹念に美しいレース編みのように
大きな完璧なレコード盤のように
そして露を纏ってキラキラと輝いた
美しい城の中央に君臨した女王よ
その静かな森の女王よ
そこへここ数年 訪れたことのない人間が
よりによってあなたの城の向こう側へ
あろうことか気まぐれに通ろうと考え
一瞬のうちに城を取り壊した。
まるで何もなかったかのように!
哀れなり。
これを哀愁をそそると言わずして
どうする。
「哀愁をそそる」
「鏡の中の自分」
鏡の中の私は
いつもわたしをみている
だけどわたしには
一番「いい顔」しかみせない。
本当に知りたいのは
わたしは あなたに
いつもどんな顔でいるのか
迷いや気づきや哀しみや戸惑いすら
どの瞬間もあなたへの想いがまずあって
その上に表情が乗っていることを。
わたしの心の芯の部分を つまり
本当のわたしを あなたにだけは
知ってほしいから。
「鏡の中の自分」
「眠りにつく前に」
眠りにつく前に
目を閉じて
一番逢いたいひとの顔を
思い浮かべて
その人の一番眩しい顔を
脳裏に焼き付けて
そう
夢で逢えますように
「眠りにつく前に」