「放課後」
いままでうんと悩んだり
楽しかったり
辛かったり
忘れたかったり
忘れたくなかったり
いろんなことがあったんだけど
あのね
月曜から金曜の放課後だけを繋いだら
キラキラした小説になるの。
あなたには絶対に言わないけど。
私だけのこころにしまっておく。
甘酸っぱい じれったい
大切な 大切な
ビロードの表紙の
長編の物語なんだから。
「放課後」
「カーテン」
外界は奇声に満ちていて
無理やり手を引っ張る奴らや
肩を組みたがる気持ちの悪いやつら
群れて同意を求めて
私を無理やり私でないものにしようと
虎視眈々と狙う奴ら。
誰も彼もが私に群がる。
ゾンビのように。
外界から私を守るものは
濃紺のカーテン。
この内側は私の世界。
今夜も魑魅魍魎や有象無象から
私を守ってくれる。
朝日がこの濃紺を
コバルトブルーに変えるまで。
「涙の理由」
美しい雲をみたとか
紅い彼岸花の中に
白い彼岸花があったとか
トンボが追いかけっこをしていたとか
塀の上で三毛猫が昼寝していたとか
いつもより早く星を見つけたとか
今日は月が大きくて眩しいとか
美しいものを見た時
知らない車のナンバーが
自分の誕生日と同じだったとか
あなたと同姓同名の人がTVに出ていたとか
「私のこと」を鏡で見るより
「あなたのこと」を見ている時間が長いとか
驚いてしまうことに気づいた時
嬉しい時、楽しい時
困惑した時、哀しいとき、
自分だけでは顔をあげられないとき
触れられたわけではないのに
そばにいるだけで温かくなるとき
すべてがぜんぶ
あなたにつながっている
それが嬉しくて 愛しくて
だからそれが
「涙の理由」
「束の間の休息」
今日は雨が振っていて
屋内から庭を眺めてはいる。
遠くの山は靄がかかって
まるでイリュージョンのように消えている
この休息もきっと
雨が止むまでの間
雨が止んだら
「束の間の休息」
「星座」
「あ、オリオン」
あなたの指差す方を見上げる。
鼓のような形を作るオリオン座
でも本当は
星と星との距離はとてつもなくあって
線でなんて繋がってもいない。
お互いもまさか
こんな地球のような宇宙の片隅で
小さな小さな人間が夜空を見上げて
星を勝手に線で繋いでいるなんて
思いもしないだろう。
お互いが向かい合って
言葉にできない想いを
何万年も 何十万年も 何百万年も
ずっとずっと心に積み重ねてきたとしても
自分たちでは決して
お互いを繋ぐことはできない哀しさ
だから
私はとなりに立つあなたをみて
静かに微笑むだけ
私達もまた 決して
つながることはできない哀しさ
「星座」