maria

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8/11/2023, 12:50:40 PM

「麦わら帽子」


夏休み

プールに行く途中

道の反対側に君を見つけた。

白いリボンの大きな麦わら帽子。

うつむいた君の顔は見えないけれど

友達と楽しそうに笑う声

名残惜しく思いながら

声をかけられなかった。

…………

夏休み

友達と遊びに行く途中

道の反対側にあなたを見つけた。

濃紺の野球部のキャップ。

声は聞こえないけれど

久しぶりにみた日焼けした眩しい顔に

恥ずかしくなって麦わら帽子で顔を隠した。

もしかしたらこの白いリボンが揺れて

私の気持ちをうっかり伝えてしまわないか

ドキドキしながら

声をかけられなかった。




ジリジリとした日差しと

夏休み 麦わら帽子の思い出

            「麦わら帽子」




8/10/2023, 1:39:29 PM

「終点」



終点というと、
寂しかったり
悲しかったり
もうおわり だと思ってる?

終点駅というのは
電車でいうと始発駅でしょう。

段々と混んでゆく朝の
ギュウギュウ詰めの通勤列車なら
必ず座って通勤できるってわけ

つまり  おわりは始まりになれる

だからあなたに伝えたい

   絶望する必要なんてないってこと

           
             「終点」

8/9/2023, 11:42:09 AM

「上手くいかなくたっていい」


姉の産んだあかんぼうを初めて見たとき
彼女はすやすやと眠っていて
早く目を覚まさないかな、と
思いながらわたしはじっと寝顔をながめた。

目が覚めると赤ちゃんは
目をぎゅっとつぶって泣き続けた。
私はビックリして
どうしたらいいかわからなくなって
早く眠ってくれないかな、と
思いながら途方に暮れた。

姉は笑いながら
「母親になるとね。
寝すぎていても心配だし
寝なくても心配だし
母乳を飲まない、飲み過ぎる、
とにかくなんでも心配になるのよ。」
と、赤ちゃんのオムツを替えながら
私に語ってくれた。

あぁ、にんげんっていうのは

なにをしても なにもしなくても

こうやって育ってきたんだ。

だから上手くなんていかなくたっていい。

だってどのような姿であっても

何に失敗しても 泣いても塞ぎ込んでも

生まれたときから

眠っている瞬間でさえ

こんなふうにじっと

だまって見守ってくれている

存在があったのだから。

だったらわたしはだれかに

この愛のバトンを渡してゆこう。


     「上手くいかなくたっていい」


8/8/2023, 3:44:01 PM

「蝶よ花よ」

蝶よ、花よ、とは
あなたはまるで蝶や花のように美しい
と、
相手をチヤホヤするときの表現だが

蝶も花も 驚くほど寿命が短い。

それを知っていて使うのであれば

結局はバカにしているのだろう。


その道でのトップに立った人に対して
「いつまでも現状維持してください」
と声をかけるのなら
「象よ、亀よ」といったところか。
どちらも成体になってから長生きだ。

いやもう こっちにしても

結局はバカにしているのだろう。


          「蝶よ花よ」

8/7/2023, 12:25:20 PM

「最初から決まってた」


こどものころに

こうだったらいいなあ

と、なんの気無しにつぶやいた事とか

将来こんな事をしたいなあ
と、思ったこととか

すっかり忘れて人生のヤブを切り拓いたり
傷を作って手当てに追われたり
病に倒れて自分はここまでかと思ったり
草原に出て ふわりと涼しい風に気づいたり
無我夢中で生きてきた。

しかし今になって思うと 
こうだったらいいなあ
こんな事をしたいなあ
と願ったことは手に入っている。
きっと 自分が願ったことは
将来の自分からのメッセージで
闇雲に藪の中で半泣きになっているときも
膿んでうずく膝を抱えながら震えているときも
すべてが この場所へ
遠回りのように見えても
そうではなく
意味のある道をひとつひとつ辿りながら
ゆっくりと やんわりと導かれ
私がこう言うことも
最初から決まってたんだろう。



だからこそ
どんなに今が痛くても
どんなに今が辛くても
この言葉を口にするまで
エンディングを見るまで
生きねばならない。

「すべてが最初から決まってたんだろう。」

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