秋になると『君』を探す
普段は読まない小説を
読書の秋のせいか読みたくなる
だから今年の秋も恋をする
小説の中に現れる『君』に
筆者のイメージの『君』とは別に
私のイメージで『君』をつくりあげる
実在しない人に恋をする
アニメとは違う想像の世界に住む『君』に
去年の『君』は服には疎いけど音楽センスは秀でる
実際に会って話してみたかった
そう思わせる人だった
秋になると『君』を探す
秋になると紅葉のように頬は染まる
「お金があれば幸せになれる」
昔はそう思っていた。
確かに今でもそう思う。
お金があれば、ほとんどのものが手に入る。
だけど、信頼という積み上げてきた努力は
お金では買えない。
いじめられて、心を病み、引きこもりだった経緯から
私は身に染みて感じている。
お金を稼ぎ、
口座に振り込まれた時の達成感は計り知れない。
改めてお金のありがたみを感じる。
お金は大事だと分かってる。
それ以前に信頼を得なければお金は稼げない。
自分が体調を崩した時に
その信頼は真心に変わり、勇気につながる。
最初で最後の晴れ舞台。
ウエディングドレスを着た君と
いつも通りのカジュアルファッションの僕。
招待客も神父もいない教会の前で
二人きりで夜空に咲く花火を見て一瞬の愛を交わす。
もうすぐ警察が僕を逮捕しに来る。
分かってる。
僕が彼女の心を盗んだからこそ今があると。
僕が彼女の夫を異世界に送ったから今があると。
本当に申し訳ない、神様。
今だけ時間を止めてよ、神様。
地元の美術館は田舎だからか
写真展が開催されることは少なくて
SNSが写真好きの私たちの唯一大きな写真展だった。
そんな折、
友達と東京の美術館に足を運んだ。
最近、頭角を表した私たちと同世代の若手写真家の写真展だ。
早速、中へ入ってみるとそこは無にあふれていた。
モノクロの写真が私たちに何かを訴えかける。
本来ならカラーで魅力が引き立つはずの花畑の写真も
モノクロにすることで各々の頭の中で違う色が咲く。
ただの風景写真ではない。
ビー玉の中の歪んだあの景色。ほとんどがそれだ。
最後の一枚は不思議な夜景の写真。
左側はリアルの夜景、右側は鏡のような反対の夜景。
私は困惑した。
本来のこの夜景を知らないから双子のように見える。
隣にいる友達はこう言った
「これは人間の生と死の世界で別れた夜景だ」
夢を見ていた。
目の前にさまざまな色のコスモスが
咲き乱れるお花畑が広がっている。
赤、白、黄色、ピンク、チョコレートコスモス。
その中のチョコレートコスモスを一輪摘み取ったら
花言葉のごとく、最愛の君との思い出がよみがえる。
初めて君を知ったあの日
君の気持ちを知ったあのLINE
放課後の教室でキスをした夕暮れ
私の何気ない一言から始まった大げんか
お互いの「ごめんね」が「愛してる」に変わった日
もう戻らないのが思い出だとしたら
私はこのチョコレートコスモスをしおりにして
恋愛小説の本に忍ばせることにしよう
その小説の名は『傲慢と善良』