地元の美術館は田舎だからか
写真展が開催されることは少なくて
SNSが写真好きの私たちの唯一大きな写真展だった。
そんな折、
友達と東京の美術館に足を運んだ。
最近、頭角を表した私たちと同世代の若手写真家の写真展だ。
早速、中へ入ってみるとそこは無にあふれていた。
モノクロの写真が私たちに何かを訴えかける。
本来ならカラーで魅力が引き立つはずの花畑の写真も
モノクロにすることで各々の頭の中で違う色が咲く。
ただの風景写真ではない。
ビー玉の中の歪んだあの景色。ほとんどがそれだ。
最後の一枚は不思議な夜景の写真。
左側はリアルの夜景、右側は鏡のような反対の夜景。
私は困惑した。
本来のこの夜景を知らないから双子のように見える。
隣にいる友達はこう言った
「これは人間の生と死の世界で別れた夜景だ」
夢を見ていた。
目の前にさまざまな色のコスモスが
咲き乱れるお花畑が広がっている。
赤、白、黄色、ピンク、チョコレートコスモス。
その中のチョコレートコスモスを一輪摘み取ったら
花言葉のごとく、最愛の君との思い出がよみがえる。
初めて君を知ったあの日
君の気持ちを知ったあのLINE
放課後の教室でキスをした夕暮れ
私の何気ない一言から始まった大げんか
お互いの「ごめんね」が「愛してる」に変わった日
もう戻らないのが思い出だとしたら
私はこのチョコレートコスモスをしおりにして
恋愛小説の本に忍ばせることにしよう
その小説の名は『傲慢と善良』
最近、眠れない日が続いてる。
そのせいで頭が働かず
人生なんかどうでも良くなって涙ばかり出る。
それでも周りの人には迷惑をかけたくなくて
職場では「いつも通り」の自分を演じ
家では「ためになる言葉」を求め本を読み漁る
昨日の夜。
私は訳もわからずベッドの中で泣いた。
涙が止まらなかった。
外では夜の空が大粒の涙を流して共に泣いてくれた。
「誰かが見守ってくれてる」
そう思いたかった。
夜の空にいる誰かが私の気持ちをくんで、泣いてる。
そう思ったら少し楽になった。
翌朝。
空は快晴で仕事に行く私を励ましてくれた。
今日も頑張ろう。
数日後の休みのために。
「おはよー。元気にしてる?」
いつも、君のその一言LINEから一日が始まる。
それから
「私は疲れてる」「俺もバテてる」
そんなネガティブな発言を繰り返しながらも
最後は
「今度、映画見に行こうよ」
「いいけど。俺、ゲーセン行きたい」
そんな風に次に会う約束を結ぶ。
電話する余裕がなくても君と話していたい
そんなときに便利なのがLINE
絵文字なしの君からのLINEは
絵文字を多用する女友達のLINEより
なぜかスマホの向こう側の君の表情を想像してしまう
最後の晩餐を最高に美味しいと思えるように
私は少しでもやり残したことをやり遂げたいと思う
数知れない幸福と
数知れない後悔が
反比例していく自分の人生の中で
どうやったら幸福の方が増えるのかと
毎日悩んでいた
ネットで検索しても本を読んでも誰かに聞いても
答えなど見つからない
それを持っていたのは自分だった
全く後悔しない生き方なんて難しいけど
不幸ばかりが人生ではないと
引きこもりから立ち直ってわかった
誰も手を差し伸べてくれない社会の中で
ただ唯一励みになるのは
やっぱり稼いだお金と疲れを癒す趣味と話せる友達
最後の晩餐を今まで以上に美味しいと思えるには
まだ無理
でも幸福と後悔の反比例の値が逆になるように
今日もさまざまなことに立ち向かう