「おはよー。元気にしてる?」
いつも、君のその一言LINEから一日が始まる。
それから
「私は疲れてる」「俺もバテてる」
そんなネガティブな発言を繰り返しながらも
最後は
「今度、映画見に行こうよ」
「いいけど。俺、ゲーセン行きたい」
そんな風に次に会う約束を結ぶ。
電話する余裕がなくても君と話していたい
そんなときに便利なのがLINE
絵文字なしの君からのLINEは
絵文字を多用する女友達のLINEより
なぜかスマホの向こう側の君の表情を想像してしまう
最後の晩餐を最高に美味しいと思えるように
私は少しでもやり残したことをやり遂げたいと思う
数知れない幸福と
数知れない後悔が
反比例していく自分の人生の中で
どうやったら幸福の方が増えるのかと
毎日悩んでいた
ネットで検索しても本を読んでも誰かに聞いても
答えなど見つからない
それを持っていたのは自分だった
全く後悔しない生き方なんて難しいけど
不幸ばかりが人生ではないと
引きこもりから立ち直ってわかった
誰も手を差し伸べてくれない社会の中で
ただ唯一励みになるのは
やっぱり稼いだお金と疲れを癒す趣味と話せる友達
最後の晩餐を今まで以上に美味しいと思えるには
まだ無理
でも幸福と後悔の反比例の値が逆になるように
今日もさまざまなことに立ち向かう
インスタグラムで見つけた夜明け前の海の写真
一度でいいから行ってみたくて
親に「連れて行って」とおねだりをした
しかし結局その願いは叶わず
夜明け前の海の写真は
見知らぬ異世界の絵のように見えた
その写真にまつわる海について知りたくて
意を決してその写真のアカウントにDMを送った
すると
「この海は私の生まれ故郷なんです。
今は都内に住んでいますが、今度の日曜日にそちらへ帰る予定があるので、一緒に行きませんか?」
と言ってきてくれた
そしてそのアカウントの怜奈と日曜日に落ち合った
「初めまして」
その声はどこか聞き覚えのある声だった
でも、怜奈さんの顔からは面影が見つからない
「は、初めまして」と私も言った
「もしかして」そう言いながら
怜奈さんは私の顔をうかがった
「あなたは、あの保育園にいた澪ちゃん?」
「え?」
「あの、覚えてませんか?
私が他の園児にからかれていた時助けてくれたのを」
「まさか、玲花ちゃん?」
彼女は「覚えててくれた」と言って泣き出してしまった
「えっ、あっ。あの泣かないで」
と私は焦ったが玲花は「大丈夫」と言って笑った
「ひとつ聞いていい?」
「何?」
「『生まれ故郷』って言ってたけど、
私たちがいた保育園はあの海の近くではないよ」
「私はあの海の近くの病院で生まれてから
母は体調がすぐれなくて
澪ちゃんのいる県の伯父の家に引き取られたの」
「そうだったんだ」
「うん。先日、産んでくれた母が病で亡くなったの。
それで思い出に夜明け前に見たあの海を撮った。
夜明け前には理由があって」
彼女は理由についてこう述べた
「亡き母が私の父にプロポーズされたのが夜明け前のあの海だったから」
ある日のテレビ番組のなかで占い師がこう言っていた
「結婚は相手のことを好きという気持ちだけだと
長く続かない。
何か目標に向かって同志として一緒になった二人は
長く続くと思う」
それを見て私は「そういうことか」と思った
初めて付き合った彼氏とは
楽しいとか好きだと思う反面
ムカつくとか苦手と思う面もあった
確かに「好き」という言葉一つだけで
結婚に結びつけるのは夢の中だけにするべきだと
元彼との思い出を振り返って思った
本気で好きならば相手の目標を自分の目標に
変えられる愛情があるのだと思う
私にはまだそこまで分かち合える人にに出会ってない
その人に出会うにはまだ何かが足りないのだと思う
いつか一つの山に二人で登って夢の頂上を目指せる
いつか彼の夢を応援し支えながら自分の夢も目指せる
そんな人にそんな自分に出会える頃が来ると祈る
本気で愛せる恋ならば盲目にはならず
お互いのことを理解し合える関係性を持てると思った
家に引きこもっていたあの頃のカレンダーは
『✖️』で埋め尽くされていた
人生の目的など見つからなくて
長い1日が終わるたび
その日の欄に『✖️』を付けていた
そんなお粗末な毎日が
予定でいっぱいのカレンダーになったのは
「働こう」と決意したあの日が始まり
就職したけど前途多難な毎日によって逆戻りするかも
と心配していた
確かに困難なことには沢山遭ってきた
しかしそれを乗り越えた経験によって今では
不安なことも「気にしない」で済ませられる
嫌なことよりも楽しいと思えることの方が多いから
家に引きこもる前の嫌な思い出と
家に引きこもっていた頃のやるせなさが
「もう逃げない」という強みに変わり
カレンダーは仕事とプライベートの予定で埋まっている