3/15/2024, 11:58:26 AM
「星が綺麗だね」
隣に座る女性に話しかける。
同僚で、ライバルで、ルームメイトで恋人。
そして……憧れでもある彼女に語りかける。
「は?意味わかんねえこと言ってんじゃねえ。
さっさと寝るぞ」
ベットに身体を沈めた彼女からは寝息が聞こえる。
一人で寝るには広いけど、二人で寝るには狭いベット。
「……僕も寝ようかな」
窓の外を見る。
溢れんばかりの星が手を伸ばせば掴めてしまいそうで。
「明日も、生きれるかな」
明日も彼女と生きれればいいな、という
淡い淡い希望の星を、掴んでしまいそうで。
そんな保証なんて、どこにも無いのに。
……朝が来て、昼が終わって、夜になって。
やっぱりこのベットは一人だと広いなと枕を濡らした。
【星が溢れる】
3/14/2024, 12:52:57 PM
安らかな瞳を覗き込む。
そして椅子に座る少女に語りかける。
『サキ、今日の裁判も疲れたよ』
『今日はね、大臣の息子をね……』
そう語りかける彼はただ人形に語りかけていた。
それでも彼には聞こえる。
『え〜っ!すごいね、パパ!』
『ふふ、もう、パパってばおっちょこちょいだなぁ〜』
そんな声が。はしゃいだ娘の返事が。
周りから奇異の視線を向けられたとしても。
彼には娘との時間が何よりだったから。
焼け落ちた屋敷から見つかったのは
孤独な男の亡骸と
焼け焦げた少女の人形。
人形の瞳は安らかだった。
眉間から血を流す彼の瞳には
安らぎなど感じなかったが。
【安らかな瞳】