力を込めて
熱した鉄を打つ甲高い音が
響き渡ると同時に火花が散った
真っ赤に燃える炉を前にして
全身から汗が噴き出し滴り落ちる
一心不乱に刀を鍛えると刀身には魂が宿る言われる
今日も一振りの刀に力を込める
作り上げた刀は美しく輝いていた
過ぎた日を想う
君と共に過ごした年月が過ぎて
過ぎ去った日を思い返す
あの日、出会ったのは運命的だった
あれから
小さな幸せを見出す日もあれば
大きな悲しみと苦しみに飲み込まれる日もあった
それでも二人で重ねた年月は
今でも温かく心に残って愛おしさが込み上げてくる
いつまでも忘れない想い出として
「またいつか、会いにいくよ」
今日も色褪せることなく
過ぎた日を想う
巡り会えたら
彼を見送った
終戦間近と言われているのに
始まった時と何も変わらない
むしろ、状況は悪くなっているように感じる
旅立つ前の彼はいつも空を見上げていて
「いつも空見てるね」
見上げていた目線をゆっくりと私に合わせて
「必ず帰ってくるから、泣かんと待っててや」
大きな手で私の頭を子どもをあやすように撫でた彼は悲しげに微笑んでいた
彼の目には何が映っていたのだろう…
「泣かんと待ってるから、無事に帰ってきて」
ぽつり言った言葉に
鼻の奥がつんと痛んだ
見上げる空はどこまでも青く澄み渡っている
この空の下でまた巡り会えたらきっと…
たそがれ
自転車の荷台から見える
オレンジ色に染まった空に明けの明星が輝いて
ゆっくりと水平線が流れていく
海沿いを走る
潮の香りが鼻をくすぐり
冷たい風が吹く
彼の背中にしがみついた温かさが
夏の終わりを告げているみたいで
どこか寂しく感じる
まだ、家に着かなければいいな…
たそがれ空を見ながら
強く抱きついた手に力がこもった
静寂に包まれた部屋
真夜中にふと目が覚めた
横に目をやると
スヤスヤと眠る君が居る
少し明るい窓の外を見ると
まだ雪が降り続いていて
景色がぼんやりとしてる
静寂に包まれた部屋で
何だか世界に僕たちだけしか
存在していないかのような
不思議で静かな夜だった