ジャングルジム
空が青い
白い雲がゆっくり流れてる
「だいちゃん待ってー!!」
か細い声で呼ぶ
タクミは身体をよたよたさせて俺の後ろを付いてくる
「タクミは弱っちぃな~ ほら!」と手を握ってまた歩き出す
はにかみながら「ごめんね」と謝るタクミに
「謝るな!今からあれに登るぞ!」
指差した方向を見て
タクミは目をまん丸にして
「ぼ、僕、あんなの登れないよ~」
なんて言ったけど聞こえないふりして走った
目の前のジャングルジムは凄く大きくてちょっと足がブルッと震えたけど誤魔化した
「登るぞ!下見るなよ」そう言って登り始める
怖いと言いながら登るタクミに
もう少し、大丈夫と声を掛け
やっと
てっぺんまで登ると遠くまで見渡せた
隣に居るタクミは広がる景色に
目を輝かせている
風が急に強くなって額に吹き付けた
自慢げな顔で
「ちょっと偉くなった気分になるんだよな( ¯꒳¯ )」
俺が言うと
「うん!」嬉しそうに笑った
タクミは
それからすぐ何も言わずに転校した…
「だいちゃん、ごめんね何も言わずに居なくなって…」
僕は今、ジャングルジムのてっぺんであの時の事を思い出しながら
また謝った…
声が聞こえる
丘の上から風が優しくそよぎ、木々の葉が揺れている
淡いカメオベージュ色の真鍮製骨壷が
手のひらの中で
陽射しを浴びてキラキラと光る
空を見上げると、そこには君の笑顔が浮かんで
「一生を共に出来て良かった
ありがとう」と
風の音に紛れて君の声が聞こえた気がしたんだ
身体中に優しい温もりが広がっていくような感覚に
ゆっくり目を閉じて
「僕も一緒の思いだよ」
この想いの声が聞こえるのだろうか…
愛しい人へ
秋恋
秋風が吹いて葛の花の甘い香りが心地いい季節になると
2人で一緒に居た時間を思い出す
胸が苦しくなる気持ちも
切なくなる気持ちも変わらないけど
それでも私はあの人を思い続けている
生きる世界が違うだけで
何がいけなくて
どこですれ違ったのか…
その答えはいつかきっと分かる
季節の変わり目がもたらす秋恋
大事にしたい
今、俺を抱きしめてくれてる君を
大事にしたいと思うほど
傷つけてしまうんじゃないかと
怖くて仕方ない
形あるものは必ず壊れる
失った時の痛みを知っているから
余計に一歩が踏み出せないんだ
夜景
窓の向こうに広がるのは
キラキラと輝きを放つ都会の夜景
今日は大事な日なんだと
緊張した面持ちで深呼吸をする
隠し持っていた指輪の箱を手に
「結婚してください!」と言った時
彼女は驚きながらも優しく微笑んで
「喜んで!」と答えてくれた事を思い出す
あれから30年…
フッと笑みが溢れると
「思い出し笑い?」と優しく微笑んでいる妻
あの時と同じ場所で
ここから始まった僕たちの愛しい日々
これからも一緒に居ようと
また誓いあいグラスを上げる