鳥が囀り、朝日が私の死んだ顔を照らし、冷たい風が私をあおる。
あぁ、朝が煩わしい。
どんなに朝を恨んだって、あの子が帰ってくる筈がないのに。
ふとバルコニーから下を見ると、遠くであの子が遊んでいるのが見えた。たしかに。
「いかなきゃ」
そういって、私は______________________________
「ジュリエット」
''嗚呼、ロミオ、あなたはどうしてロミオなの''
私達は絶対に離れないわ。この身がどうなろうと。
たとえ悲劇の結末を迎える運命だとしても、私達の愛は永久に消えないわ。
ねぇロミオ、私達はあの世でもまた、巡り会えるのかしら?
また巡り会って、あの世で幸せになりましょうね。
約束よ。
クロゼットからローブと紐をとり食料をカバンに詰め僕らは逃げ出した
あの監獄から
あの化け物から
どこにゆけばいいのだろうか
民衆は皆国王の政治に不満を持っていた。
だから、とうとう革命が起こった。
街は何もかも赤に染っている
行き交う人々の冷たい目線
争う人々の怒鳴り声
その間を無我夢中で弟の手を引っ張って走り続ける
これからどうすればいい?何をすれば?
行くあてもなければ、居場所もない。
それでも、明日に希望を託して走り続けた。
そんな中、ある噂を耳にした。
「国境を越えて隣国のアデリヤに行けば救われる」
アデリヤ…聞いたことのある名前だ。
そんなこと信じられないが、一縷の望みに縋るしかなかった。
国境をこえるべく、僕らは走り出す。
突然、民衆の歓声が背から聞こえてきた。
後ろを振り返ると、あの化け物の首が、高い台の上で大きな刃物にさらされている。
僕はあの化け物の哀れな運命を知った。
それでも構わない。
また走り出す。
どれほど走っただろうか。
民衆が起こした暴動に意図せず巻き込まれてしまった。
バンッ!!
耳を劈くような鈍い音がした。
民衆が撃った銃の弾が弟の腹をたまたま貫いた。
どんどん血が流れていく。地面が赤くなり、弟は膝から崩れ落ちた。
「……………!!!」
声が出なかった。
あぁ、弟を守れなかった。僕は弱い兄だ。
心の中で、自分を責め続けた。
弟を背負い、安全な場所を目ざして走る。背中が生暖かくなっていき、僕の腕を血が伝っていく。
どんどん弟の意識は遠くなっていく。
とても危険だ。
どうすれば?このままでは弟の命が危ない。
そんな時、白い翼を見た。
その翼は優しく輝き、僕らの前に止まった。
誰だろうか。
「貴方達は10の年を迎えました。貴方達の望みを叶えて差し上げましょう。」
あぁ…これが女神か…召使いの者から聞いた覚えがある。
弟は、かすれた声で、「もっと生きたい」
と願った。ちょうど良かった。間に合った。
僕は、「僕は……俺は!!もっと強くなりたい!!もっと強くなって、大切な人を守りたい!!!」
そう叫んだ。
「その願いで良いのですね?では、叶えて差し上げましょう」
と言って、消えていった。
みるみる弟の体の傷と血が消えていく。
本当に女神はいたんだ。御伽噺などではなかった。本当に願いを叶えてくれたのだ。
良かった…!本当に…!!!
ありがとう……神様……………
少し岩の影で休み、また出発した。
アデリヤを目ざして。