白妙

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1/24/2024, 3:05:33 AM

【こんな夢を見た】


 こんな夢を見た
 何を目指しているのか分からないが、屋根の上を歩いていた。
 滑り落ちないように気を付けて歩きながら、隣の家の屋根に飛び移る。何軒も連なる屋根を歩き続けた。
 沢山の昼と夜が流れた。陽が昇り沈み、月が満ち欠け、星は巡った。屋根は次々現れ、歩みは止まる事がない。
 或る夜、ほうき星が目の前を横切った。思わず、その光る尻尾に手を伸ばした。
 あ、と思う間もなく、身体は空へ翻っていた。身体は軽く、落ちているのか浮いているのか分からない。足元に屋根は無く、身体は投げ出されたそのままの体勢で、重力から自由になっていた。
 私はほうき星の尻尾を掴み、ほうき星と共に空を流れていた。ほうき星は軽く尻尾を振ると、「ああ、見つかった」と笑った。






1/22/2024, 12:54:51 PM

【タイムマシーン】


もしタイムマシーンがあれば
私は過去に行く

漱石の木曜会に参加して
夢十夜の感想を伝える

私がどれだけ
この作品を愛しているか
それだけを伝える


1/21/2024, 12:33:38 PM

【特別な夜】


 インターホンが鳴り玄関に出ると、燕尾服とシルクハットの黒猫が立っていた。

 帽子をとって優雅に一礼し、私を迎えに来たと言う。お迎えなら仕方がないので、私は黒猫に付いて行った。

 黒猫は慣れた仕草で腕を差し出す。ならば、と私もその腕に手を添えた。

 黒猫は、緑に輝く瞳を細めて笑った。燕尾服もシルクハットも黒い毛に同化し、夕闇に溶け込んでいる。

 どこをどう歩いたのか、気が付けば、大きな洋館の前に立っていた。

 「海猫軒」という札が出ている。

 黒猫は私をエスコートしたまま扉に手を伸ばす。特別な夜の幕開けを知らせる音が、蝶番の軋む音として響いた。


1/20/2024, 12:39:46 PM

【海の底】


どんな言葉も
君に伝わらないのなら
貝になりたい

貝になって
海の底に沈む

昏く澄んだ海の底
ときどきぽつりと
あぶくを吐く


1/19/2024, 9:27:22 PM

【君に会いたくて】


意地っ張りな君が
ふとこぼした
「アイタイ」

同じ気持ちの僕は
夜を飛び越える決心をした



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