巡り会えたら
僕はこの世の全てを愛している!
自然も、人も、学校も、言語も。
全て、どこかしら違っていて、どこか似ている。
そんな所を見つけた時、僕は愛しさを覚える。
次は何に巡り会えるだろうか?
…もしかして。
キミかな?
奇跡をもう一度
今奇跡が起きたら良かったのに。
あの日、神様は私の目の前で彼女を助けた。
その時はただ単に良かったと思ってたんだ。
けど、神様はもう現れない。
私を助けてはくれない。
今は私の中にあるのは神様とあの子への憎悪だ。
もう一度奇跡が起きたら憎まなくて済んだのに。
やっぱり神様は最低だ。
黄昏色の空を見て、あなたを思い出す。
あの日、私に勇気を与えてくれた大きな背中。
大きく笑う口。
褐色の肌が今でも鮮明に思い出せる。
ありがとう。
心の底からあなたに感謝してる。
「先生、私もう死にたい…!」
それが、私の初めて聞いた彼女の言葉だった。
私・宇良 和美は病院に勤める女医だ。
小児科で病気の子供達の面倒を見ている。
やはり、子供なため問題児が少しばかりいる。
そんな中、私が最近頭を悩ませている少女がいる。
それが彼女・尾木 沙也加ちゃんだ。
「沙也加ちゃん、おはよう。良い天気だね!」
私は元気風な声で彼女に話しかける。
「…」
「今日は、お昼にリハビリがあるよ。それだけだから一緒に頑張ろうね!」
「…」
見ていたら分かる通り彼女は一言も私たちと口を聞かない。
「(全く…今日もダメだったか…)」
数日後____
彼女はまだ口を開かない。
すると、とある事が起きた。
「う、宇良先生!!沙也加ちゃんが!」
突然、雑務をしている私の元にかなり焦っている看護師が飛び出してきた。
「…!?沙也加ちゃんがどうしたの!」
私は冷静に対処した…と言いたいところだが気を抜いていたところにいきなり来たので、焦らずを負えなかった。
いや、私は案外沙也加ちゃんに肩入れしていたのかもしれない。
____
「沙也加ちゃん!何かあったの?!」
急いで病室に駆け込んだ私の目には布団の上に盛大に出ている吐瀉物あった。
「…!」
沙也加ちゃんの病気は癌だ。
だから、吐き気を催す事は時々あった。
だから大丈夫。
彼女は死なない…
「急いでバケツの準備!そこの田中さんは汚れた布団を片付けて!」
「っは、はい!」
沙也加ちゃんの顔を覗き込み、様子を確認する。
涙と吐瀉物でぐちゃぐちゃになった顔。
彼女の顔は綺麗な方だ。
それがこんなに汚く歪むなんて、想像もできなかった。
「大丈夫だよ。まだ気持ち悪い?」
「…(コク)」
私が優しい声で問いかけると彼女は静かに頷いた。
私は看護師の人が持ってきてくれたバケツを手に取り、沙也加ちゃんの口の下にセットした。
____
「もう大丈夫みたいだね、良かった」
普段はあんな焦ることは無いのだが、私も気を抜いていたし、あの場にいた看護師は全員新人でベテランの人達は別の場所にいたらしい。
「(全く、何をしてるのやら…)」
やれやれ…という気持ちで病室を出ようとした時だった。
ぐいっ
「…!?」
突然服を引っ張られたかと思って見ると、その犯人は沙也加ちゃんだった。
「さ、沙也加ちゃん?どうかしたの?」
動揺しながらも聞くとそこには衝撃的な言葉が聞こえた。
「先生、私もう死にたい…!」
泣きじゃくりながら叫ぶ彼女。
私ら驚きを隠せなかった。
「そっか、そうなんだね。理由を聞いてもいい?」
私は静かに聞いた。
「だって、もう何をしてもどうせ死ぬんだよ!だったら意味ないじゃん!先生ももう私に優しくしないでよ!!」
彼女は俯き、叫ぶ。
彼女の涙が新品の布団に落ちる。
「そんな事ないよ、あなたは死なない。」
私は彼女の手の甲にそっと手を乗せた。
「何言って…!____」
振りほどこうとする彼女の言葉を遮って私は言った。
「私は絶対にあなたを死なせない。だって私は
医者なんだから」
「…!!」
涙を浮かべる彼女の目が少し、輝いたように見えた。
「期待しててよ、再来月の手術。絶対に死なせないから」
私はそう言って病室を出た。
1人しかいない病室には、安心したような泣き声が聞こえた。
数ヶ月後____
「先生!ありがとう!!!」
満面の笑みで退院していく少女が窓から見えた。
私はこの仕事に、私自身に自信を持っている。