大好きな君に伝えていれば
今頃私が隣にいたかな
【ひなまつり】
ーー灯りをつけましょ。お花をあげましょ。
そんな声と共に、笛と太鼓の音色が聞こえる。
目を開くと、上座に1組の男女が澄ました顔で並んでいるのが見えた。女の近くにはよく似た顔の、しかし服装はいくらか簡素な女が控えている。
…ああ、結婚式か。目出度いことだ。
漠然と理解したものの、なぜ自分がここにいるのか、さっぱりわからない。渡された酒を一口飲む。なかなか美味しい。
2人の後ろにある金屏風で、風に揺られた植物の影が揺れている。酒に弱いのかたらふく飲んだのか、赤い顔をした壮年の男が楽しそうに笑っている。みんなが笑っている。笑って、笑って、笑ってーー
ーー暗転。
パチリと目を開くと、私は着物を着ていた。このために卸した一等品だという少しどころじゃない重たい着物を羽織って、ティアラのような飾りを頭に着けて、渡された扇子を持って、旦那様になるひとの横に座る。
宴が始まる。目出度い日だ。
目出度い日を、春の陽気に包まれて迎えられた。
嬉しい。嬉しい。うれしいな。
あれ、でも私、ちゃんと笑えてるのかしら。
少し遠くの下座で、誰かが目を開いた。
ーーーーーーーーーーーーーー
「まつり」って祭り以外にもありますよね。
たった一つの希望?
自分が生きてることじゃないかな。
欲望。あって損はないが、あり過ぎると損をするもの。
前にソーシャルゲームの課金額が二桁万円いった自分にドン引きした過去があるので間違いない。
とはいえ、あって損はないのである。自己研鑽のための欲望は、むしろ持っておくべきだと思う。
あれをしたい、これはしたくない、こうなりたい。そういう自分のわがままくらいなら、人類みんな持っている。
懸念されるべき欲望とは、自分を含めた人を害する可能性を持つものだと思う。知名度や話題性を重要視するあまり手段を選ばない炎上商法なんてものがあるように、犯罪性の高い欲望は、あると損をするものだ。
要は、何事もバランスが大事なのだ。
努力はしても無理はしないように、超えたらまずいラインがあるのだ。そしてそのバランスとやらは、世間と個々人同士のバランスで保たれている。お互いのちょっとした妥協と譲れないラインを掛け合わせながら、なんとか保っているのだ。たぶん。
ーーーーーーー
欲望にはサボローと同じくらいの距離感でいてほしいですね。
遠くの街へ行ってみたい、と思うことはわりと多い。
ただ、自分のこの気持ちは非日常感を求めての衝動と認識しているので、数日程度でいい。
それに、遠くの街が日常と化したら、また別の遠くの街に行きたくなる。確証なんかないけど、きっとそうだ。
だから数日程度でいい。