私を撫でる手が大きくて優しくて
抱きしめてくれる体が暖かくて
体を重ねた時 嬉しそうにする声が愛おしくて
そんなだから、いつまでもさようならが言えない
すぐそこまで別れが来ていることを知っているのに
お題:優しくしないで
引き出しを開ける
雑多に封筒にしまったままの
宝石のルースたちを取り出す
どの封筒に 何が入っているかは
わたし自身も把握していない
この封筒はブルートパーズの封筒だったか
こっちはオパールだ 虹みたいに揺らいでいる
これは…ガーネットたちだ みんな色が違う
あ ガーナイトだ こんなとこにいたのか
ブラッドショットアイオライトと一緒にいたんだな
カラフルが押し込まれた引き出し
誰もそれを知らない
わたしだけが知っている
お題:カラフル
貴方といた学舎のあの部室の中に
私の全部が詰まっていたのにな
お題:楽園
貴方は自分を風に例える
キザなやつだなと思うが、実際そうだった
掴みどころがなく、澱みなく、
そして何より自由で、止まることがなかった
放浪の旅人のようなものなんだろう
多分ずっと、一生そうとしか生きられないんだろう
私は港だった
夜霧の中で彷徨う船でもある
昏い霧を独り揺蕩う者であり、
あるいは帰り着くものを待つだけの人間だ
風が帰り着くのを待ち続けたが、
時折髪を梳くように流れるだけで
ついぞ私の側に寄り添うことはなかった
風に乗れたならよかったんだろうと思う
帆を張ってゆく船であれば良かったのだろうか
あいにくと私に張れる帆はなかった
ただの小舟でしかなかった
あるいは鳥ならば良かったろうか
どこまででも共に行けたろうか
けれど彼が風としてしか生きられないように、
私は夜の霧に霞む港として、
あるいは船としか生きようがなかった
私は今日も風を待っている
お題:風に乗って
目と目が合ったあの瞬間
初恋だと知って
目と目が合った今この瞬間
私はそれを諦めた
私は貴方の特別ではなかったね。
さようなら。
お題:刹那